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けれど姉が死んだのは僕のせいだ、そんな感情が全て払拭されたわけでは無く。
「お化け屋敷かあ……」
そんな中、学園祭の準備はゆっくりと始まろうとしていた。
「なんや…伊吹は不満なんか」
「今年もメイドやりたかったとか?」
にやにやと性質の悪い笑みを浮かべる斎藤と赤城。
「違うし!」
そうだ、去年はメイド喫茶でメイドをやったんだった。もちろん夕を含め、僕以外のいつものメンバーは女装なんかするはずもなく、何故か執事服を着ていたのだけれど。
でも結局あまりクラスに居ることができなかった気がする。
「誰か?生指(せいし・生徒指導(室)の略称)に行ってくれない?」
「僕行くよ、何をしてくればいいの?」
いまだにその思い出を掘り起こそうとする2人から逃げるように僕は委員長に近づいた。
そのノーブルな顔立ちを委員長はほころばせる。
「暗幕を借りてきてほしいんだ。あ…黒いカーテンのことね。毎年クラス毎に当たり外れがあるらしくて、ほつれてるところがあったらついでに縫っておいてほしいんだけど……頼める?」
「うん!上手くできるか分からないけど…」
頬を掻いた僕に委員長は
「光が漏れなかったらいいわけで、上手い下手は関係ないから安心して。任せたよ、ありがとう」
と言った。
でもやるからには完璧にやりたい僕。途中で裁縫道具を取りに行こうと計画しながら廊下を歩くのだった。
「ほつれてるってレベルじゃないですね…これ」
「そうだね!」
何故生指に在籍する教師は誰も彼も威勢がいいのだろうか。
正確には生徒会が貸し出しているものだから、この先生は生指の先生であって、また生徒会の先生でもあるのだけれど。
「びりびり…ですよね」
「頑張れ!」
「う…」
借り受けた暗幕はもはやカーテンではなく、ただの「黒い布」で。
「直せるかなあ…これ…」
短い髪が特徴的な先生は笑う。ちなみに女の人で、期待を裏切らず体育教師だ。
「長年使われてるからどうしてもな。今年度で廃棄っていう話もあったんだけど…縫って使うっていうクラスが出たもんで、まあ…そういうことだ!」
言葉も出ない。
呆然と立ち尽くす僕に、隣で他の備品の貸し出しをしていた先生が
「ごめんね、内藤先生が買い替えの進言をしてくれたんだけど」
「ばっか!それは言うなって言ったろ」
あれ、なにこの雰囲気。
顔を真っ赤にする内藤先生と―・・内藤というのは髪の短い先生だ―・・それをにやにやとした顔で見つめる、一見大人しそうな香山先生。
「…あれ?でも…たしか伊吹君は生徒会補佐じゃなかったわよね?」
「は?お前パシられてんのか?」
「え、いえ…」
「名簿には雛森夕君って………、あ…」
毎年各クラスに1人、生徒会補佐を選ぶことになっている。これはどの学年も同じことで、1年の頃推薦され嫌々なった(そんな顔を周囲には決して見せなかったが、2人きりになった瞬間散々に文句を言っていた)生徒会補佐を2年次も務めることになったのは眠ったままの夕だった。
「まだ…昏睡状態なんでしょう」
「はい…」
姉さんへの感情を暗に孕んだ物言いに僕は目を伏せた。去年の冬に起きた事故は、この狭い箱の中でそれなりに有名になっている。
ふいに耳許で声が響いた。
「ひぃ」
「…!シン……」
「うっわ。なにこれ、びりびりじゃん!せんせぇーどうにかならないんですかぁ?」
「あっ、赤城君…」
「赤城か、スマン。これ、この通りだから縫って使ってくれ」
「しょうがないなー、ひぃ、行こ。じゃあね、せんせー」
いきなりのことに目を瞬かせていた僕の腕をシンが掴む。
引ったくられた暗幕が揺れた。
「朝陽、行こう」
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