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「そうなんだ」
「…う、うん…」
尻すぼんだ僕など気にならないかのように夕はじっとその枕を見つめ、ゆっくりと首をひねる。
ああ、ほんとうに、夕だ。
それは何かを思考している時の仕草で。思い出してみればたしか、婚約発表会で会った有紗さんもこんな雰囲気を纏っていた気がする。
「ねえ、」
ふと夕は何かを思い出したように携帯端末を取り出すと、ロック画面をかかげながら言った。
「ちょっと見てみて」
「え…っ」
「この壁紙、見てみて」
「俺と伊吹君って、いったいどんな関係だったの?」
「……!」
とん、と壁についた背を嫌な汗が伝う。
いつの間にか心も体も端に追い詰められていた僕は胃液が沸騰する思いを抱いた。懐かしさと、愛おしさと。それから悲しみが目尻を掠めていった。
「伊吹君?」
かたく瞼を閉じて、気持ち良さそうな顔で眠る僕。頭を乗せた膝に―・・俗に言う膝枕に散らばる髪にそっと据えたように横たわる手は、白い。加えて述べるならば、それは上から見下ろすように撮影されていた。
それはつまり、
「退院して、昨日初めてこれを渡されたんだ。…唯一無事だったバックに入っていたってね。充電して開いた時はびっくりしたよ。君の寝顔が壁紙なんだから」
「これって、俺が膝枕してるんだよね」
顔中に血液が集まったら、きっとこんな感じになるんだろう。
かあっと朱に染まった頬が熱い。
「そ…」
「なにかの…悪い遊び?」
それでも笑いを含んだ声に、前を向くことができなくなる。
残酷だ。
残酷で、甘苦くて、痛い刃物が身体中に赤い線を刻んでいく。
「…うん」
手のひらの柔らかな肉に爪をたてて、僕は笑った。
「僕達は、たしかに友達だったよ」
「……そう」
こくりと頷く。
「そうなんだ」
そう言った夕の指が四角形の淵をなぞるのを、僕はじっと見つめていた。
好きを我慢するのは、つらい。
レオは言った。僕らを解放したいと。
「ごめんね」
「え…」
「思い出せなくて、ごめんね」
なんて顔で、笑うんだろう。
眉を寄せ、青い瞳を悲しそうに歪めて。何故そんな、辛そうな顔で。
「きっと、辛い思いをさせているよね。……思い出せなくて、ごめん」
そうだ。夕が目を覚ましたあの日、縋って、泣いてわめいたのは僕だった。
「うん。やっぱり、懐かしい香りがする。」
抱き締められて初めて、涙を流していたことに気がつく。
「……っ…」
息を吸うごとに涙がぽろぽろとあふれだしてくる。けれどそれとは別に、近づきすぎた体温に、至近距離で聞こえる大好きな人の吐息に身体が熱くなってくるのも事実で。
こんな状況だけれど、僕も一応、男なわけで。
端的に言ってしまえば。
(た、勃つ……勃っちゃう…!)
「なんだか俺、伊吹君ならこういうことしても嫌なかんじがしないんだ」
耳許で、喋らないで欲しい。
「君が最初に、起こしてくれたからかな」
首筋に、顔を埋めないで欲しい。
「あたたかいね」
「ぅ…」
「伊吹君?」
「っゃ…」
「あ。…そうだ。理事長のところに行かなきゃいけないんだった。帰ってきたら食堂を案内してね。」
あっけなく離れた身体。
パタンと扉が閉じるのと、ヘナヘナと床に座り込むのはほぼ同時だった。
布越しにでもわかる床の冷たさに反して、身体中が発火したように熱い。熱くて、気持ちがいい。
「…、」
ゆっくりとチャックを下ろし、著しく屹立したペニスを取り出す。
躊躇はしなかった。
散乱した夕の衣服に手を伸ばし、顔をぐりぐりと押し付ける。
自分の意志で声を我慢することが出来そうにない。くぐもった声をあげながら、ゆっくりと滑る先端をなぞった。
「ん、ン…ゆ、…ゆっ…」
……夕。
夕が、好き。
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