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先ず行われたのはごくごく簡単なイントロダクションと班決めだった。
「んー…と…。よし、決まったみたいだね」
“特殊な事情”を抱えた夕は同室者の僕と同じ班になることがあらかじめ決まっている。僕、夕、斎藤、赤城、委員長。それから同じクラスの田井中 智を加えた6人で無事班員は決定した。
委員長は照れ臭そうにはにかむ。
「よろしくね」
「よろしくっ!」
田井中が左手を高くかかげる。
彼は夕と同じくらいの背の持ち主で、色素の薄い茶色の髪を靡かせる、きりりとした顔つきの好青年だ。中等部からの持ち上がり組だから、当然僕らと仲が良い。
「うむ!よろしく〜」
「楽しみやな〜沖縄っ」
赤城は斎藤は言うまでもなく、きゃいきゃいと飛び跳ねる。何故か夕は深々と頭を下げて言った。
「よろしくお願いします」
「イケメンが…頭を下げたぞ…」
「え、智、そこなの?」
委員長はすかさず突っ込むが、田井中は口を手のひらで塞ぎ―・・そして僕を見やる。
「いや、僕はしないからね」
「ちぇ」
そんな生温かい目で見ないでほしい。
「次は班内で部屋割を決めてくれー、原則2人部屋だから、上手くペアを組むんだよ。出来次第申請するように。部屋の位置を決めるからね。」
先生の言葉に教室内の気温は急上昇する。昂ぶる斎藤は強く机を揺さぶった。痛いからやめてほしい。
「部屋!割!俺オーシャンビューでよろしく頼むわ!」
「よし、斎藤は駐車場ビュー希望っと。」
「え、赤城、まって、お願い。」
「良いアスファルトが見れるといいね」
「俺に恨みでもあるんか?」
「こら、今はペアを決めるのが最優先。」
と、委員長は言い、丸めた再生紙で斎藤をはたく。その隣で田井中はやれやれと首をすくめた。
「じゃ、皆ぐっちょっぱしよっか。……いい?……じゃ、……せぇ〜〜の!」
咄嗟に五本指を全て広げた、
結果。
「……俺は結局駐車場ビュー、と…」
「完全に道ずれだね、これ」
斎藤と夕のペアと、
「は、さすが俺。オーシャン独り占めだぜ」
「いや、赤城くん。僕もいるからね」
赤城と委員長のペア。
そして、
「伊吹とペアなんて、なんか久しぶりだなっ」
「中等部以来かな」
僕と田井中のペア。
なんだかホッとしたような、がっかりしたような。
名前を記入する夕を横目に見る。いつもの青い瞳、その向こうは当然A4の再生紙で。それをいいことにすらりとした長身を舐めるように見つめた。物を書く姿すらかっこいいとか、
(そういうの、ずるいと思う…。)
田井中はひとりでに意気込む。
「ちゃんとWii持ってくから安心しろよ。マリカーとゼルダもな。あ、ちなみにゼルダはトワプリのほうな。」
「はは…中等部の時に懲りたんだと思ってたけど」
「いや、全く。今回こそは一夜で俺のハイラル平原を平和にしてやるぜ」
「ごめん。全然分からない」
中等部の時行われた林間学校でWiiを持ち込み、某マリオパーティーを始めた田井中の話は有名だ。
…その理由は言うまでもないだろう。
ただ一つここに述べておく。
先生の前でジャンピング土下座する彼はなかなかの見ものだった。
僕と田井中が盛り上がる一方、その会話はとんとん拍子に行われていた。
「タクシー観光やら諸々の説明があるから、放課後生徒会補佐は生徒会室に集合。委員長、副委員長は―・・」
委員長は首をかしげる。
「あれ、雛森くんって生徒会補佐じゃなかったっけ」
「そうなんだ?」
「うん。たしかそうだったよね。ね、斎藤くん、雛森くんは生徒会補佐だよね?」
「おう、係はほぼ去年のまんまやからな。」
「そうなんだ…」
どこか不安気に碧眼を彷徨わせる夕に、斎藤はパチンと指を鳴らす。
「せや。隣のクラスの生徒会補佐に連れ添い頼んだろ。そしたら都合ええやろ」
「あ、光くんか。斎藤くん仲良いもんね。雛森くん生徒会室久しぶりなわけだし、よかったね」
夕はゆっくりと微笑んだ。
「ありがとう」
「やめてよ、僕は土下座したくないし」
「それ掘り返しちゃうの」
マリカーはしたいけど。
「でも前回は何故か伊吹だけ怒られなかったよなあ、あれか、金か?」
右手の親指と人差し指でマネーのジェスチャーをする田井中。
どうやら今まで先生と話をしていたらしい。彼の隣にいつの間にか赤城が立っていた。
「日頃の態度じゃない?」
「お前にだけは言われたく無いんだけど」
「はぁ?」
「……暴君、不良、不順異…?同性交ゆぃデッ」
「死ね。今すぐスカイツリーから飛び降りて死ね」
なんだかヒートアップしてきたので、止めることにする。
「どーどー」
「んもう!いやぁね、その仕草。伊吹クン可愛い。食べちゃいたい!」
「キモい」
赤城が眉を顰める。
僕は頷いた。
「うん、キモい」
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