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『ちょっと先生に気に入られてるからって調子乗ってんじゃねえの』
両腕を掴まれ、壁に、頭上に押し付けられている。
涙を堪えて光は言った。自分は悪いことを一つもしていないはずだ。怯える必要は無い。
『僕が先輩のファーストを奪ったというのなら、それは違います』
『は…』
『僕がファーストになって、先輩のやりたかったソロを吹くのは単に僕が努力した結果です。それ以外の何物でもありませんし、譲る気もありま……っ!!』
腹を殴られた。
『ぐ、…ぁ…』
吐き気と、それから消し去ったはずの嗚咽を口から垂れ流す光。
『それが調子乗ってるっていうんだよ!!』
もう一発、殴られる。最早真っ当な言葉は通じない。身体は酷く痛むのに、光の頭の中は何故か妙に冷静だった。
彼の気持ち、悔しさはじゅうぶん理解できる。叫びたくなるのも分かる。最後の夏のコンクール、後輩である光がファーストを吹き、自分はセカンドを吹く。そのことがつい先日発表されたのだ。
彼はたしかに努力した。ただ彼の目指す“ゴール”が光のそれとは異なっていた、ただそれだけのこと。
男はひたすらにファーストを吹くことを目標としていた。と、光は考える。自分は違う。ファーストを吹くことはあくまでも過程。大会で勝ち上がるために、その手段として、努力をしていた。 だから、
負けるもんか。
歯を食いしばり、じっと先輩の顔を見つめる。
しかし男は顔こそ醜く赤らめたままだが、口許を緩めこう言った。
『………おまえ、俺がわざわざこの部屋に呼んだ意味わかってんのか?』
ぞろぞろと、何かの合図を受けたわけでもなく男たちが彼の言葉に集まってくる。
『なっ…』
切迫し窮屈な瞳のなか、ぬらりと光る鈍色が目に入った。
それが何なのか理解するよりも前に、
『っ…や…っ!!』
髪を掴まれる。横から勢い良く引っ張られて、顔面に何かが擦り付けられる。
『舐めろ』
『は…』
眼前にあるのは、見るからに先輩のでは無いが同性の股間で。
『舐めろよ』
その言葉が何を示すのか即座に理解した光は顔を歪め…次の瞬間青ざめた。壁のように立ちはだかる男の横をするりとすり抜けた先輩が、別の男から受け取った物を目にしたからだ。
そうだ、この部屋は。
『これ、返してほしいだろ?』
男はトランペットを弄ぶ。それは母親から譲り受けたもので、光にとって唯一無二の愛器。
舌打ちよりも、涙が先に流れた。悔しいよりも悲しかったのだ。何故自分は命よりも大切なものを無防備にしておいたのか。
男の爪がベルの銀色に、直角に立てられる。はじかれるように光は叫んだ。
『やめろっ…!触るな!!』
『じゃあ、やることは分かってるな』
今度は頭上から声が降ってきた。
髪の毛は相変わらず掴まれたままで。
知らない男だった。人間は極限状態に置かれると誰でもおかしくなってしまう。楽器を傷つけられるくらいなら、フェラするほうがマシだと光は思った。そうしておそらく部外者の―・・ベルトを外した。ジッパーを、光は静かに泣きながらもたもたと下ろした。
『はやくしろよ』
『ぅあっ…』
ガン、と横腹を別の男に蹴られる。目の前の足にすがりついてなんとか持ち堪えた。
光の心は黒い水でいっぱいいっぱいになっていた。この男に奉仕しさえすれば、トランペットは返ってくる。けれどしなければ傷付けられてしまう。それ以上に酷い目にあうかもしれない。
性器は醜く反り返っていた。
はくはくと短く息をして、最後の理性を振り絞り躊躇する光の頭を男が掴んだ。
『ンぐっ…』
汚いモノを無理やり捻じ込まれる。一度喉奥を突いたそれは、ガンガンと光の口内を犯し始めた。
『さっきまでの威勢はどうしたんだよ』
可笑しくてしょうがないとでも言いたげな口角で、笑う先輩が隣に立っていた。その手にトランペットは無い。代わりに、ランプが点灯した携帯端末が握られていた。
嫌な予感がした。
『せっかく撮影(うつ)してるんだから、もっといい演技見せろよ、なァ』
『はは、それ、どうするつもりだよ』
光は見ることのできない快感に歪んだ笑顔で、その頭を鷲掴みながら友人は聞いた。男は笑う。
『おい聞いてるか』
返事のかわりに光に問いた。もちろんその間(かん)ムービーは撮っていない。心が歪んでもなお、賢い男がミスを犯すはずが無い。
『この動画をネットに流されたくなかったら浜口に言え。僕はファーストを降りますって、言え。』
鬼畜だなー、腰を振る男は呑気に笑う。体液が口の中にほとばしる。著しく成長したペニスは先走りを内頬に擦り付ける。
『ん、ンッ…ぁぐ』
くぐもった声で光は泣いた。
もう、僕は駄目かもしれない。
理不尽な屈辱を与え続けられた光の身体は冷たく冷え切っていた。
パツパツに開ききった唇が痛くて、悲しくて、痛かった。死んでしまう。そう目を瞑った時、それは起こった。
ピロリン、軽快な音楽が小さく鳴った。
『は―・・』
ペニスが口から引きずり出されたのと、その男が間抜けな姿で床に倒れこんだのはほぼ同時で。
携帯を構えた手のかたちはそのまま、棒立ちした先輩の首筋にすべやかな形を見つけた。
『その動画、ぜひ僕にも見せてください』
凛とした声が聞こえた。
膝をぺたりと床につけたまま、潤んだ目を上へ上へと滑らせる。
綺麗な青色。
金髪碧眼の少年がナイフを片手に、静かに微笑んでいた。
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