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夕が取り出したのはデフォルメされたイルカのストラップ。
カットされた透明な素材がキラキラと光を反射していて、たしかに綺麗だ。値段もそこまで高くない。
「ほんとうだ。ピンクとブルーでワンセットなんだね」
「そうみたい。買おうかな」
「いいんじゃない?誰かにお土産?」
「…まあ、ちょっとね」
「ふうん…?じゃあ僕は会計の間、そこら辺をうろうろしておくよ」
「迷子になるなよ?」
「なるか!ばか!」
意地悪な顔をする夕に べ と舌をだしてからストラップコーナーを離れる。
「マグカップなんてのもあるのかあ」
あちこちにイルカやシャチ、ペンギン等のキャラクターがあしらわれたグッズが所狭しと並べられている。
そういえばまだペンギンは見てないや、なんて考えながら僕はふらふらと歩いた。
それにしても夕はいったい誰にあのストラップをあげるつもりなんだろう。
僕もお土産を買ったほうがいいのだろうか。
…誰のために?
「…赤城とか?」
「なにが?」
「ゅっ、」
ひょこ、と顎をのせられた肩がはねる。
「おっと」
案外時間が経っていたようで、夕の手にはショップ袋がぶら下がっていた。
「買ってきたよ」
「お、おつかれ」
「…で、赤城がなんだって?」
クラスメイトの名前を呼ぶその声は低い。
「え、いや…僕もお土産を買っていこうかなって」
「そんなの、いらないよ」
「なんで?」
「…は、…わからなくていいんじゃない?」
「なんで怒ってるんだよ」
背中から離れて僕の顔を覗き込む夕に首を傾げる。
機嫌が悪いのかと思えばそうでもないらしい。にっこりとした笑顔にため息をついた。
「それよりさ、すこし歩こうよ。ペンギンも見ていないしね」
「うん」
なんとなく、手を繋ぎたい。
そうして見つめた白く長い指は、ショップ袋をゆらゆらと揺らしていた。
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