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「印…?」
「うん、しるし」
いつの間にか左手も、夕の手のひらのなか。
冷たい指が這って。
指を優しく撫でる感触に肩が揺れる。
「ゆう…」
「こうやって俺と朝陽が一緒にいることを誰かに認められたいとか、……認められないのが不安だとか、…そういうのじゃないんだ」
「ん…」
「だけどね」
「俺は朝陽のものって印がほしい。…朝陽が俺のものっていう印が、ほしい。―・・・物体で証明しておかないと、不安なんだ…俺は弱いから。…公然と…俺にはここに、輪っかを嵌める権利がないでしょう?」
薬指をきゅ、と掴まれる。
僕達の恋に、確証なんてない。
それは痛いほど実感している。
もちろん、夕だって。
「どんな形でもよかったんだけど…たまたまね。これを見たら、今日ここへ来たことも思い出すかなって。」
「…うん。ありがとう…嬉しいよ」
「ん、…よかった。どういたしまして」
ふわりと笑う夕につられて僕もはにかむ。
そうしてすこし、いいことを思いついた。
「じゃあさ、これ、交換しようよ」
「交換?」
「うん。お互いに交換して、持っておくの。結婚指輪みたいじゃない?…って、ちょっと恥ずかしいかな」
「朝陽らしいな。いいよ。そうしよう」
床一面に広がった青い光が僕達を包む。
水の流れる音を聞いた気がした。
あたりにはもう、人はいない。
「…ん、え?っと…あ、…あなたはこの男性を、健康な時も病の時も……あれ、なんだっけ?」
「はは、それ…神父が言う台詞だろ」
「えーっ…じゃあどうしよう…」
「んっ、ごほ、…あなた方は自分自身をお互いに捧げますか?」
「なにその声!?夕ってばおじいさんみたい」
「神父の真似だよ。うるさいな」
「へへ…神父さん、顔が赤いよ?」
「…っ、もう、早くそれ頂戴」
顔を赤くした夕が珍しくて、僕はちょっと笑ってしまう。
「…ん、」
「朝陽…こう言う時は 捧げます って言うんだよ」
「ん、は、はい…捧げます…」
「はい、捧げます」
夕がそう言ってイルカを交換した瞬間、力いっぱいに抱き締められる。
「ゆ、ゆう…?」
「朝陽…愛してるよ」
「っ、…あ、…ゆ…」
「朝陽は?」
「ぼ…僕も、あ、愛してる」
「ありがと。…これからもいっぱい思い出作ろうな」
「うん」
「ずっとずっと、そばにいるから」
「…!っ、うん…僕も、ずっとずっと、そばにいる」
「うん、…また、水族館にもいこう」
「約束だよ?」
「うん、絶対」
後々僕たちは、今日のことを思い出すことになる。
「さ、朝陽…寮に帰ろう」
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