アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
2
-
「ご、ごみ…」
狼狽える赤城を無視して、自分のトレーから箸だけを取り出す夕。それを赤城の持っていた箸と取り替え、言った。
「さ、食べよう?」
「……無視か!超痛いんだけど!?…あとなんで箸取り替えるんだよ!」
「…煩いのがいるけど…朝陽、大丈夫?席移動しようか?」
この2人がこうやって絡むのは日常茶飯事のことで、なんだかんだ言ってそれぞれ楽しそうな顔をするから救いようが無い。
昨夜散々赤城のことで僕を蹂躙したくせに、涼しい顔で僕の顔を伺う夕にため息をついた。
「こら雛森!おい!」
「…声が大きい。キンキンするからやめてくれない?」
そうやってぎゃあぎゃあと2人が騒ぐ横で、大人しく両手をあわせる。…この2人に付き合っていたら日が暮れるから。
「お〜今日も相変わらず、雛森と赤城は仲がええなぁ……伊吹、隣ええか?」
「あ、斎藤…いいよ、どうぞ。こんな時間に珍しいね、朝練は?」
「今日はテスト発表やろ。せやから朝練はナシ。ついでに言うと放課後の部活も無いで…ぅよっこいしょ、と」
そう言って夕に負けず劣らずの長い脚を机の下で組んだのは斎藤駿。赤城と同様クラスメイトで、特に仲のいい友人の1人。
「あ…来週なのか、期末考査」
「伊吹は普段ちゃんと勉強しとるから大丈夫やろー、俺なんてアレ、イッチーに説教される予定やからな」
「はは、市川先生か…それは怖いな」
前回の中間考査で赤点を“獲得”し、数学科準備室に強制連行される斎藤を目撃していた僕は笑った。
普段のほほんとしている数学担当の市川先生は、赤点を取った生徒を数学科準備室に連行し、夜な夜な過酷な労働を与えるらしい…というのがもっぱらの噂だ。
つまるところ、与えられた大量の課題を全てこなすまで解放されない、ということだろう。
「普段はぽやぽやしとるただの癒し系なのに、赤点取った途端ふわっふわの髪の毛逆立ててまー可愛いのなんのって……あ、伊吹ちょっと引いとるやろ」
「そ、そんなことない、よ」
「へー…そうかぁ?」
そう満更でもない顔をしながら箸を出し巻き卵にすべらせる斎藤を尻目に、塩鮭に箸をのばした時だった。
「あさひ、」
くいくい、よりはグイグイとカーディガンを引っ張られて。
正面を向いていた身体を右隣の夕に近付ければ、今にもくぅんと鳴きだしそうな顔をした夕が箸を咥えて座っていた。
「夕?…どうかしたの?」
「…さみしくて」
「そっ…んぐ」
出し巻き卵を無理やり口に突っ込まれたかと思えば、更に力を入れて腕を引っ張られる。
僕の耳が夕の口にくっ付く程の距離で、囁かれた。
「昨日、言ったこと…まさか忘れてないよね?」
僕そっちのけで赤城と戯れていたのはどこのどいつだ!
という言葉は虚しくも卵焼きに吸収された。この策士め。
「っん…」
にやりと笑って僕の耳朶を軽く吸った夕は満足したらしい。元の体勢に戻り、塩鮭の解体に取り掛かる。
見られていなかったか確認する為にあたりを見回して、軽く眉間を揉んだ。
赤城は苦手なワカメと格闘しているし、斎藤は相変わらずにやにやしながらおひたしを口に運んでいる。
妙に綺麗な、それでいて実験のような夕の手つきを見つめながら卵焼きを咀嚼した。
「美味しい…」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
12 / 97