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「お、おまえは、雛森のっ…」
光の輪をつくって揺れる、あたたかな色味の金髪。
冷涼な空気を纏った、青い瞳。
「ご存知でしたか。光栄です。」
夕はそれらを従え、他人が見れば卒倒するような甘い笑みを浮かべてそう言った。
痛みとショックで意識が朦朧としている朝陽にも、剥き出しの腰を掴む男の手から緊張が伝わる。
「ち、ちがうんだ、これは」
「違う…?何がです?………ああ、」
ゆっくりと、それまで男に向けていた視線を朝陽に向ける。
それはまるで、それまで朝陽の存在など認知していなかった、そんな仕草だった。
一瞬顰められた彼の眉。
朝陽がそれを見ることは叶わない。
「…生徒を犯している、ということについてですか?…先生?」
「そうですね…とても、同意の上に成り立っている行為とは思えませんが」
「…っぐ、」
言葉を詰まらせ、朝陽の身体を突き離した男は走り去ろうとして……腕を掴まれた。
夕はそれを捻りあげながら、…実に恐ろしく、冷たい目をして彼のためだけに囁く。
「僕の名前を知っているということは、それなりの覚悟ができている…そういうことですよね」
「…っ、やめ」
「あなたは彼に、一生癒えることのない傷を作った。…たとえ証拠が無くともあなたの人生1つや2つ、どうにでもできる力を僕が持っているということは、よくご存知ですね?」
「…ひ、」
「……離れた場所から眺めているだけなら良かったものを」
「あなたはやり過ぎた。今すぐこの場を去りなさい。後ろを振り返ってはいけません、早く」
「……ひぃっ…!っ」
教師が慌てて走り去った後。
溜息もつかず一見涼しい顔で机上にひろがる酷い有様を一瞥し、扉とカーテンを閉めてまわった夕はポケットから1つの携帯端末を取り出した。
「―――――」
短い会話の後、コツコツと響く足音。
朦朧として焦点の合わない朝陽の服装を正し……しかし釦の取れた箇所を繕える筈も無く、自分の着ていたカッターシャツを脱ぎそれを被せると、上半身をだらしなく机上に横たえ震える朝陽の身体を抱き起こした。
「朝陽……朝陽。もう、大丈夫だよ」
「……だれ…?」
とろんとした目。
夕は目を細め、囁く。
「俺は夕。…雛森夕。君の、同級生だ」
優しい声に感化され、堰を切ったようにぼろぼろと溢れ出す朝陽の涙をしなやかな指で払う。
「ぅ…、っ、ぼく、…僕は」
夕は微笑んだ。
「君は朝陽。伊吹朝陽だ。」
「ほら、…」
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