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「…ほら。目が綺麗になった。」
フラッシュバックした過去にぐずぐずと怯えていた僕を引っ張りだしたのは、やはり夕だった。
人気(ひとけ)の無い最上階。
封鎖された屋上へと続く扉が鎮座しているこの踊り場は、予備の学習机や椅子が積み上げられた、言わば穴場スポットで。
昼休みに1人通りがかった職員室の前で担任に呼び出された僕はとある雑務を頼まれた。
『中等部の図書室まで、この資料を取ってきてほしい』
あの“いざこざ”について知る人間は実際に場をおさめた雛森夕、当時ルームメイトだった赤城慎一、加えて学園の上層部にしかいない。とされている。
あの教師は実家を継ぐという大変“名誉な理由”でこの学園を去った。…これについては噂なのだけれど。
だから僕をあの忌々しい場所へ派遣しようとした教師に悪気は全く無い筈だし、恨むこともできない。
それでも僕は……微かに残る断片的な記憶を掘り起こす為のトリガーを引かれてしまったことにより、酷く怯え、狼狽した。
夕は担任を言いくるめ、ガタガタと震える身体をここまで運んだらしい。放置してあった椅子に腰掛け、向かい合うように膝に乗せた僕の背中をさすってくれた。
泣きぼくろに吸いつきながら零れ落ちる涙を舐め取った夕は腰に手をまわし、優しく微笑む。
「…ほら。目が綺麗になった。」
台風の後の、水溜りみたい。
水気を含みきらきらと輝く瞳に夕は心からの言葉を…あの日囁いた言葉を再び口にした。
「…、ゆ、夕…ごめ…ごめん」
「こういう時はありがとう、でしょ?」
「ん…あ、ありがと」
「……少し、落ち着いた?」
「うん…」
そっか。
そう呟きながら髪に鼻先を埋める夕に応えるよう首筋に唇を寄せた。
心地のいい体温に微睡んでいると、人差し指と親指で顎を持ち上げられる。
「寝ちゃいけないよ」
数秒見つめあった後磁石のように引かれ合い重なった唇を食み、啄ばんだ。
先に音を上げた夕。そのシャツを僕は掴み、さらに深く、咥内を貪ることに専念する。
いつも夕がそうするように上顎を舐め、舌の裏、歯茎の裏に溜まった甘い唾液を啜り飲み下した。
隠微な水温が静かな空間にまろび落ち、階段を転がってゆく。
息を吸う為に唇を離すと当然のように糸で繋がった2人に夕の瞳は揺れた。…その青色に困惑と興奮を見つけ、思わず腰を動かしてしまう。
腰にまわしたままの腕に力が入る。
「今日の朝陽はえっちだね。どうかしたの?」
「…ん」
「……ねえ、このままここでセックスしようか」
それもいい。
いつもなら顔を赤くして頑なに拒否するような提案にこの時の僕は何故か頷いた。
真っ直ぐな肯定が返ってくるとは流石に思っていなかったらしい。
夕は目を丸くして爪をたてると、次の瞬間には目を細めて―・・ゆっくり触れるだけのキスをした。
「ああ、でもゴムが無いや…ここは部屋じゃないから…困ったな」
困ってなんか、ないくせに。
熱を孕んだ視線に犯されながら、ぷちぷちとカッターシャツの釦を外してゆく。
「中に出して。…今すぐ夕が欲しい」
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