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「今を選んでって…」
「違う、違うよ」
「夕は姉さんの婚約者でしょう」
「……っあさ、」
「ごめん。僕、皆のこと、…皆のためって考えてるフリして、結局自分のことしか考えてなかった。」
「朝陽、俺は」
掴まれた腕を振りほどく。
その碧眼に傷付いた色を見つけて、内臓が潰れるような思いに歯を食いしばった。
好きだよ、夕。
「姉さんにバレた」
「……!」
愛してるよ
「…ばれたからってわけじゃないんだ。ただ僕と姉さんは家族で…。…だから夕、僕と友達の関係に戻ろう。そうしないと、」
「朝陽っ」
「愛してる。大好きだよ、夕。だから、別れよう。」
「いやだっ、いや、…やめて、朝陽……ずっとずっと、そばにいるって…」
『ずっとずっと、そばにいるから』
『…!っ、うん…僕も、ずっとずっと、そばにいる』
ふと、思い出した。
ストラップを交換した、水族館。
一緒に見たペンギン。
赤城に嫉妬してたよね。
そのまま2人で笑いあって、コンビニのご飯を食べた。
「ずっとずっと、そばにいるよ」
「友達として、姉さんの弟として、そばにいるから…」
ポケットから携帯を抜き取って、ストラップを外す。
震える指先を上手く操ることができない。
いつの間にか僕は、目から涙を流していた。
「いま…いままでありがとう。これからも、よろしくね」
僕は上手く、笑えているだろうか。
「夕、ありがとう」
そう言って今度は自分から腕を掴んだ。…これはエゴだ。最後の、悪あがき。
「…っ」
一瞬だけ、そっと重なった唇。
…2人の証。
ゆらゆらと揺れるブルーのイルカを手渡して、再び扉を開けた。
「朝陽…あさ、朝陽っ…!」
とにかく走って、走った。
どこへ向かうかなんて、頭に無い。あるわけない。
溢れ出した涙で顔がぐちゃぐちゃだ。
「…っ、ゆう、…ぅ、夕、っ…」
これで、終わり。
ほんとうの、終わり。
そうして一つの扉が、音も立てず閉じた。
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