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ばあ様の後ろに隠れたものの、時雨に捕まりそうになった咲良は守弥の腕の中に避難してしまった。
本気で追い回した訳ではないが、ビクビクしながら張り付く咲良の背中を、守弥もトントンと叩いてやっている。
『何だかんだで馴染んでるなぁ……』
歳の離れた兄と妹……、若しくは、学生結婚で設けた子供と親……な二人。
微笑ましいが、妙にぎこちない。
『ま、会ったばっかりだからね。
ぎこちないのも当ったり前か』
余りつつき回すなと目で伝えてくる兄に頷き、時雨はばあ様に向き直った。
「で、どうすんの?
さくらを元の世界に返しちゃう訳?」
「返すもなにも、道が閉じたから無理だと思うけどねぇ……」
「へ?」
「妻乞いは一人につき一回。
対の世界との道も一回こっきりしか開かないからねぇ……」
「そんな………………っ。
本来のわたくしは、贄姫の苦痛を引き受ける忌み子でございます。
もりや様の対は、姉の咲耶で間違いない筈ですのに……。
では、わたくしは……もりや様の婚儀を台無しにしてしまっただけなのですね……」
血の気が引いた咲良は、そのまま床にへたりこんだ。
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