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へらへらするな
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side 杜宮 啓介
「良かったら、杜宮サンも御一緒しません?」
胸糞悪い。
吐き気がするのが自分でも分かる。
きっと俺の顔は俺が思ってるより、相当気味が悪いくらい、笑顔なんだろう。
目の前の糞餓鬼が、それを分かってわざわざ、俺に話し掛けるのも腹が立つ。
(………あー、クソ。ぶっ殺してぇ)
己の自制心との闘いだ。
これで俺がこの糞餓鬼に、煽られ爆発したら、負け。こいつの思うツボ。
「いや、折角だけど遠慮しておくよ。少し外に出ただけでまた家に戻らないといけないから」
誰がどう見たって完璧な笑顔。
しかし、こいつに見透かされて。
俺もヤケクソ。
今の俺の笑顔は、誰が見ても分かってしまう位に、不自然。
"無理に笑顔を作っている"これが正しい。
「…そうなんですかぁ。いやー、ザンネン」
ニヤニヤと笑う糞野郎。
性格がクソ悪い餓鬼をなんで、お前は連れてるわけ?なぁ、望月。
「そっかぁ、杜宮にもお汁粉の美味しいお店教えたかったなぁ」
そんな誰がどう見たってオカシイ筈の俺の笑顔。気付いて無いわけない癖に。
天然でボケてて、鈍感そうな顔しといてさ。
変に鋭いじゃん、お前って。
知ってるんだぜ?俺。
「本当に残念だよ。また誘ってくれ、望月」
ニッコリと気持ち悪い笑顔で嘘くさい言葉を吐く。
……なんだよ、なんか言えよ。
普段の俺の完璧な笑顔の時でさえ、お前は反応する癖に。
(………どーでもいいってか)
「おーう。暇なときにでも行きましょーよ」
へらっと笑う顔。
たまーに笑って見せる顔。
たまにしか見れないから本当はちょっと嬉しく思う筈なのに。
…今は、凄くイライラする。
………はぁ?ナニコレ。
なんだよ、これじゃあ俺、ガキみてぇじゃん。
「うん。お誘い、楽しみにしてるよ」
頬っぺた痛い。俺の声、口調チョーキモイ。
……あー、ウザい。俺と望月の会話、全部聴いて、笑ってやがる。キモイ、ムカつく、クソガキ。
「それじゃあサヨーナラ、杜宮サン」
キモイくらいの爽やかな笑顔で手を降ると、そのまま望月の腕を掴んで歩きだすクソガキ。
「こーちゃん、ハラヘッタ。やっぱ先にガスト寄ってこーぜ」
「…うへー。俺ガスト嫌いなんだけど。あそこの抹茶パフェ、サイアク」
「あー?デザート食べなきゃいいじゃん?」
「イヤイヤ。だって、俺お腹いっぱいだもの」
「はー…?なら食べるなよ」
「イヤイヤイヤ。食べるよ?甘いものは別腹って言うじゃない?」
「…この甘党」
親し気な二人の背中を見詰める。
自然な雰囲気。まるで、違和感なんて、ない。…その様子に何故か胸がチクチクする。
二人の会話が聞こえなくなるまで、只見つめて居た。いや、何故だか動かない自分が居た。
……俺の前だとあんな顔、しない。
クラスでもぼへらっとしてて、滅多に笑わなくて。無表情で、表情が乏しいのに。
(ヘラヘラ…するなよ、馬鹿)
よく笑うお前とか、なんで俺が遠くで見なくちゃいけないワケ?
(………本当に、今日は嫌な日)
…つーか、何で俺、お前のコトでこんな気持ちになってんのよ。ワケが分からん。
己の髪を、乱暴に掻き毟る。
グルグル回る思考が鬱陶しくて俺はそのまま目蓋を綴じた。
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