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「こーちゃん、本当にアイツとトモダチ?」
ガヤガヤと騒がしい店内。
幼馴染のシオちゃんは、ステーキを頬張りながら、俺に尋ねてきた。
…という俺も、新作の白玉入の抹茶パフェを口に頬張りながら、んー?と生半な返事を返す。
「アイツって…杜宮のこと?」
ぷるぷるとスプーンの上で揺れる白玉を見詰め、そのままぱくっと口に放りこむ。…うん、美味しい。
「あー…そうそう、杜宮サン。つーか、結局食べんのかよ、ソレ」
フォークでクイっとパフェを指差しながら、俺を呆れた様子で見詰める。
「マズイんじゃなかったっけ?」
抹茶アイスをスプーンで掬い取る。
少し溶けて柔らかくなったアイスを口に運ぶ。…ん、前よりも抹茶の味濃くなったなぁ。
「これは新作の白玉入の抹茶パフェDXなの。前よりも値段高いケド…」
俺の親切な説明も虚しく、シオちゃんはまるで興味が無いらしい。へーっと、それだけ返された。……あのさ、なら聞かないでよ。自分から聞いて置いてさ。
「でさ、杜宮サン。トモダチなの?」
シオちゃんの瞳がまるで愉しそうに光る。
興味深々てな顔で探る様に言葉を使う。
「…まあ、オトモダチだけど…?」
「へぇ、仲良いの?」
一緒に帰るくらいは、と口にしぱくっとアイスを口に入れる。
…実際のトコどーなんだかねぇ。
「気に入ってんの?」
既に食べ終わったのか、シオちゃんの食器はきれいにカラ。…早食いは体に悪いのになぁ。
「……どーして?」
咥えたスプーンをそのままに、じっと相手を見詰める。そんな俺の様子をやはり愉しくニタニタと嗤うその顔は少しニガテ。
「見てたら、分かるだろ。…俺に会わせたくなかったんじゃない?」
鋭いその目付きはやっぱり侮れないなぁ。
バレバレなのは、お互い様ってワケね。
「それにさ、話さっさと切り上げて行こうとするし?俺と杜宮サンを話させない様にするし?何?本気…?」
ふうっと溜息を吐き出す俺を、頬杖を付きながら眺めるシオちゃんが、次に言う言葉が分かってしまう。
「…だから?シオちゃん、はっきり言っていいよ?」
遠回しに突っついてくるあたり、タチが悪い。そういう小細工、キライなのよ、俺。
「俺とこーちゃんってさ、昔っから趣味被るよね」
綺麗に微笑む顔は、何かよからぬ事を考えている時。…昔っから変わらないよね、ほんと。
「……その"遊び"良い加減、ヤメテほしいんだけど」
昔はこーちゃん、こーちゃん。可愛かった。だけどこれは昔から変わらないシオちゃんの"遊び"。
シオちゃんは真面目だし頭良いし優しいんだけど、…何故か悪戯がスキ。
(大好きなシオちゃん。だけと俺は一つだけキライな所が、ある)
「仕方ないじゃん、昔から俺とこーちゃんは、スキなモノが一緒になっちゃうんだから」
シオちゃんはちゅーっとストローで烏龍茶を吸い上げる。カラッ、っと氷と氷が音を立て
合い、ぶつかる。
(…簡単にウソを吐くこと)
本当の弟みたいで、大好きだったシオちゃん。俺たちは小さなガキの頃から何時も一緒に遊んでた。
俺の"一番のオモチャ"を何時も欲しがる。
喜んでくれるから、幾らでも譲れた。
中学に上がると、今度は"恋人"まで手を付けるようになった。シオちゃんは決まって俺に言う。
『趣味が被った』『たまたま』『好みだった』
"だから、譲ってくれる?"
…と。
「……今回も俺にくれるよね?」
何時もみたいに、と彼は笑った。
…もしかしたら、シオちゃんは俺が気に食わないのかなと考えていた。
「…いーでしょ?こーちゃん」
彼は何故"俺のもの"が欲しいのか、も考えた。
シオちゃんが幸せになるなら、って身を引いて来たけど。
……なんでだろ。
如何して今は、『いいよ』の一言が、出ないんだろ。
杜宮の、あの心底嬉しそうな笑顔が、チラつく。…なんだろ、胸が、痛いや。
「あげたく、ない…なぁ」
零れ落ちたのは、苦しげな息と、言葉だけ。
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