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嫌いじゃない
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side 杜宮啓介
放課後。
やっと一日が終わった。
(…はぁ。委員会長引いたな)
かなり凝ってしまった肩を解すように、回す。本当に疲れた。この学校の連中は、馬鹿ばっかし。……なんで、俺はこんな学校に来たんだろ。
溜息を盛大に吐き出した。
…親から自由になりたいからだったろーが。
なのに、なんでまた猫被ってまでイイコちゃんやってんだろう…馬鹿は俺だろ。
(…今更くだくだ考えたって仕方ねぇーし、さっさと帰ろ)
教室へと戻り、ガラっとドアを開ける。
「お疲れ?…」
間の抜けたような、ゆるい声が響く。
俺はえっ、とそいつを凝視した。
「……なんでお前いんの」
疲れてるせいだ。
普段なら、何時もの『委員長』の俺を演じる筈だ。…けど今日は本気で疲れてる。苛々する。…俺らしくない。
俺は資料を鞄に仕舞いながら、ぶっきら棒に質問をする。すると望月は、座っていた椅子から立ち上がる。
「ほら、今朝の忘れモノ」
ぶかぶかで、ダルんとしたジャージ姿でカーティガンを羽織ってるやつは何食わない表情で、ずいっと俺に返す。
「…お前、こんなの学校に持って来たのかよ」
わざわざ?
本当に何考えてんだろコイツ。
「まあねぇ。さっき一回帰ってから待って来たのよ」
「…そのまま置いとけよ」
デッカいスコップ。こんなの持って学校再登校する馬鹿いるかよ、普通。
ふっと望月がこれをもって登校してる姿を想像し、なんだか笑えて来た。
「…下校する生徒に変に思われんだろ、馬鹿」
人の目なんて気にしてる奴には見えねぇけど。…本気で自由すぎる望月が少し、羨ましくなった。
「誰も俺なんてみてないでしょーよ。…あの、委員長?笑い過ぎじゃなくて?」
小さく小刻みに震えながら腹を抱えて笑いに耐える俺を、困ったようなそんな表情で望月は見詰めていた。
「…じっ、自由過ぎ、ホント…お前っ…」
くくくっと何時までも笑が込み上げた。
…なんだかさっきまで悩んでた俺、ちっせぇな。どーでもよくなるっか、そんな感じ。
モヤモヤして苛々して。コイツに八つ当たりっぽいことしようとして。…ホント俺、何やってんだろ。
「お前ってさ、バカ?ってか…アホ…うん。変わってるよな」
スコップを見詰めながら、乾いた泥を手で擦る。…嫌いじゃない…かも。うん。
「………あのねぇ。アンタ俺のこと馬鹿にし過ぎでしょ。ふつーよ、俺は」
気に食わないとばかりに、少し眉間に皺を寄せている。…何気無いほんの少しの表情の変化。乏しいな、本当に。
「あっそ。スコップサンキューね。んじゃ」
笑いがやっと収まり、鞄を背負えばそのまま下校。…退屈でつまらない高校生活に、面白いモノを見つけた。
望月、光汰ね。
なんだろ。この懐かしい気持ち。
宝物を見つけた時みたいな、そんな。
(……わくわく、してる)
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