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ヒーロー計画3
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スライド式のドアには『風紀委員』の文字。
他の委員会や部活動は別棟に専用の部屋が用意されているが、この風紀委員だけは特別扱いで、校舎の1階に存在している。
廊下に沿うようにして貼られている拡大写真には、大樹の他数人がカラフルな全身タイツを身に付け、各々が好きな戦闘ポーズを決めて写っていた。
これが現在の大樹の夢第一弾の風紀委員ヒーロー化の結果だ。
今のところ敵はいないが、それでも毎月開催されるヒーローショー兼風紀指導によりその認知度は飛躍的に上がっている。
本当なら風紀指導など大樹にはどうでもいいことなのだが、形だけでもしておかないとさすがに教師や大人たちの目もあり不味い。
自身の権力の限界を見極めているからこそ、根回しやパフォーマンスが必要なことは分かっていた。ただ本当に形だけなので、緑や金などの奇抜な髪色の者はいないが、茶髪などの地味な染髪は後を絶たなかった。
登校時の服装も、制服着用が任意なために今更注意したところで何の効果もない。それを教師も分かっているのか、基本的には容認の姿勢を取っていた。
同志たちにも恵まれ、彼の作戦は順調に成果を上げている。
そして、さらに追い風となる噂を聞いた大樹は、いても経ってもいられず風紀委員室へ一番乗りを果たしたのだった。
正真正銘本当の正義の味方になるための計画、一度は頓挫しかけ、棚上げされていた第2弾、ヒーロー対悪役の対決が実現するかもしれないと。
少し広めな教室には入ってすぐに、ローテーブルと会議用の長机。脇には簡易的なキッチンに、冷蔵庫、食器棚。そして、奥には重厚なエグゼクティブデスクが置かれていた。もちろん大樹の定位置はマボガニーで作られた特注のエグゼクティブデスク。つるりとした机面に手を滑らせると、程良く沈み込むくらいのクッションが効いたアームチェアーに腰を下ろした。
しかし、居ても立っても居られないのか、座っては廊下の外から聞こえてくる音に反応するたび立ち上がり、そして違うのかと肩を落とし座る。
何度か文字通り起居を繰り返していると、
「おや、レッドじゃないか? 珍しいじゃないか、君が一番乗りだなんて」
少しして現れたのが、風紀委員副委員長である木織だった。芝居がかった口調の彼は、そのまま大樹の横を通り過ぎると背後の窓を開け広げた。
カーテンが翻り、爽やかな風を部屋いっぱいにする。
何事にも大げさな彼の行動に既に慣れていた大樹は、彼の挙動について触れることなく振り返りながら木織を見上げる。
「なあ、ブルー。例の噂は聞いたか?」
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