アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
ヒーロー計画7
-
「て、てめえもグルかっ」
匡から見れば仲睦まじく会話を楽しむ二人の様子に、怒号を響かせる。
「グルって、彼は風紀委員長だよ。俺より偉いんだよ?」
「やっぱりそうじゃねえかっ。クソッ」
木織の言葉に、確信を得た匡は大樹を睨みつけながら後退る。十分な距離を開けると、回れ右をして走り出した。
「廊下は走ったら、駄目だよな」
しばらく間を置くと、大樹は楽しそうに木織に同意を求める。
「……まあ、そうだね」
彼が言葉を言い終わるか言い終わらないかの間に大樹は匡を追い、大股で歩き出した。決して急いでいるようには見えないのに、ものすごいスピードで廊下を進む。彼を呼び止めようとした小柄な生徒は、そんな暇すらなく通り抜けていった大樹の背中を呆けたように見つめながら立ち尽くしていた。
寮を出ようとしていた匡を視界の端にとらえた大樹は、笑みを浮かべて速度を緩める。すぐに捕まえてしまっては面白くない。つかず離れず距離を保ったまま中庭を通り過ぎ、校舎裏までやってきた。
「っ……!」
大樹は大きな桜の木の1メートルほど前で足を止めた。足の音が途切れたことに気が付き、匡が後ろを振り返る。対峙した大樹の視線は桜の木に縫い付けられたように固まったままで、匡が徐々に距離を開いても後を追ってくることはない。理由は分からなかったが、そんなことを考えている場合ではない。もう後ろを振り返ることなく駆け出すと、すぐに大樹の視界から見えなくなった。
大樹は悔しそうに眉を顰めると、反転して帰路に就く。
「まあ、いい……」
楽しみはこれからだ。ズボンの後ろポケットから匡の財布を取り出すと、クツクツと笑いをかみしめる。
作戦は、下準備が肝心だ。悪役がそう簡単にヒーローショーに出演を了承することはないだろう。彼の弱点を見つけ、それを盾に出演交渉を有利に進める。
財布から取り出したのは、折り目すらついていない大切にしまわれていた家族写真。海水浴場での記念撮影なのか、海パン姿の匡が満面の笑みで写っていた。すらりとした長身の少女と柔和な笑みを浮かべる女性。その背後に隠れるようにして写っているのは、弟だろうか。ほとんど顔の見えていない弟の存在に、大樹は瞳を煌めかせた。
こいつは使える、と。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
7 / 59