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ヒーロー計画9
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それにいち早く気が付いた匡は、キョロキョロとあたりを見渡し走り去る。状況判断もなかなかで、人ごみに紛れた匡を見つけるのは至難の業かに思えた。しかし、匡は高身長かつ、あの目立つ髪色だ。
大樹はあっさりと匡を見つけ出すと、一直線で彼のもとへ向かう。混雑など彼にとってはモーセの海割りのような感覚でしかなかった。手を掲げれば群像は一つの意思を持ったかのように左右に割れ、大樹の進行を妨げることはない。
早々に追いつくと、匡の肩をつかみ無理やりこちらに振り向けさせる。
「おい、お前。いちいち逃げんじゃねえよ。捕まえる俺の立場にもなってみろ。面倒くさくてしょうがない」
「なっ、放せっ。というか、今お前にかまってる暇はねえんだよ。このクソ変態ストーカー野郎がっ!」
その気色ばんだ声音に、周囲がザワリと息をのむ。相手はあの水渓大樹。俺様レッドと名高い、この学校の影の支配者、風紀委員の長である彼にそのような物言いをしてただで済むと思っているのだろうか。
廊下中の生徒が固唾をのんで見守る中、口を開いたのは大樹で、
「まあまあ、いいじゃねえか。何? 困ってることがあるなら俺に言ってみろよ。大抵のことは解決してやるぜ?」
馴れ馴れしく匡の肩を抱き、耳元で囁く。それはお前だ、という返答を期待したものだったのだが、それよりも先に周囲から短い悲鳴が上がった。バスケットシューズが体育館の床とこすれるような声に、大樹は顔を上げ小さく舌打ちをする。これ以上ここで目立つのは分が悪い。彼の背を押すようにして進むとあっさり抵抗することなく歩き出した。
そこで匡が逃げていた理由が自分に対してではなかったと感づいた大樹は、自分の背後に隠れながら辺りを注意深く見まわす彼を見下ろしながら片眉を上げる。
あれだけ脅迫めいたことをしていた自分よりも警戒するものとは一体何なのか。
自分の所業を棚に上げるわけでもなく同列に扱い、それでも平然と彼の隣を歩く大樹の耳朶に、嬌声を含んだ甲高い声が飛び込んできた。ギクリと体を強張らせる匡に、臆することなく声の主を見やると、
「きょんきょーんっ! 僕たちから逃げるなんてひどーい」
ずいぶんのと小柄な、まるで子猫のような集団が彼らを取り囲む。腐っても肉食。大きな瞳で挑戦的な視線を匡に向ける。
「って、水渓先輩もっ。どうしてこんなところに?いやーん。僕たち超ラッキー」
匡に一直線だった集団のリーダー格的存在が、少し遅れて大樹の存在を認識、するやいなやターゲットにロックオン。あざとく上目遣いを駆使しながら大樹に近寄っていく。
それを無感動に見下ろしていた大樹が、腑に落ちたのか匡に視線を移した。
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