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ヒーロー計画13
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「……だから好きです」
大樹を抱きしめ、足取りも軽やかに去っていく少年に、やれやれと首を振るのだった。
風紀委員の委員たちは個性的な者が多かった。個性的といえば聞こえはいいが、要は変人たちの集まり。ヒーロー願望のある者を募集したところ、意外と乗り気な数人が手を上げた。大樹に取り入りたい者や下心丸出しだった者はそれ以前に排除した。
少数精鋭ではあったが、正義の心を持つ者たちの思いは一つ。若干遠巻きにされつつも、生徒会執行部亡き今、憧れの対象でもあった。もちろん生徒会が完全になくなってしまったわけではないが、学園の平和と秩序を守る風紀委員の存在感は圧倒的であった。
***
「そろそろ、落ちねぇかな」
梅雨入りを前に、大樹は曇り空を見上げて独り言ちる。風紀委員室に居るのは現在大樹一人だけで、弟のことを口にした途端、あからさまに避けだした匡を思いながらアームチェアーに深く凭れる。
一時、心を開きかけていた気もするのだが、何がまずかったのか。今では声をかける隙もなにもあったものではない。見つけたと思った瞬間、彼は地平線の彼方へ消えている。
今までの行動すべてが悪かったのだという自覚のない大樹は、差し迫るヒーローショーに多少の焦りを感じていた。別に今まで悪役がいなくとも成立していたショーであるため、彼が絶対に必要だというわけではない。しかし、自身が掲げた目標期間を過ぎても彼に話しかけることすらできていない自分に苛立ちが募る。
何が悪かったのか。どこがいけなかったのか。いくら過去を反芻しても問題点が見つからない。腹立たし気にテーブルを人差し指で突いていると、
「おや、君がイライラしているなんて珍しい。君が一番乗りの時は決まって何か問題が起こっているようだけど、今回は何が原因なのかな?」
木織が慣れた様子で紅茶の準備を始める。カチャカチャとカップの音を鳴らしながら鼻歌交じりの彼に、
「悪役が捕まらないんだ」
「ああ、この前言っていた庭村君のことだね。捕まらないというのは彼がうんと言ってくれないのか、物理的に近づけないのか」
「後者だ」
大樹は木織に今までのことを説明する。どんなやつかを見るために部屋に無理やり押し入ったこと。財布を盗んだこと。猫集団から守ってやったこと。弟を脅迫のダシにしたこと。
「……何が悪かったのか、皆目見当がつかないんだが?」
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