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ヒーロー計画18
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「その変態野郎って言うのやめろよ。俺には水渓大樹というれっきとした名前がだな、」
「知らねぇ。つーか、マジで財布返せよ……」
「そのうち返してやるから、ほら試着は大事だぞ? 激しい戦闘シーンでピッチピチだと破けて恥ずかしいぞ?」
先ほどまでの邪悪な空気を霧散させ、ニタニタと笑みを浮かべた大樹が、匡の背中を無理やり押して部屋へ招き入れる。
別室だと思っていたドアの向こうは衣裳部屋で、色とりどりの全身タイツやベルトにヘルメット、変身小物がずらりと並ぶ。
匡の何とも言えない表情に、大樹は足取りも軽やかに特注で作らせたと簡単に宣う。ハンガーの並ぶラックの一番奥から本物の特撮に使われるような精巧な作りの被り物を取り出すと、
「さあ、着てみろ。本番は明日だ」
満面の笑みで被り物を匡に押し付けた。
「あ、明日ぁ!?」
突然の発表に声が裏返る匡。あまりにもあっさりというものだから聞き間違えかと疑うも、
「ああ、明日だ。お前がなかなか捕まらないのが悪い」
すねたように大樹は確かにそう言って、回れ右をして部屋を出ていく。
「え? おい、これどうやって着るんだ」
閉めた部屋から聞こえてくる怒鳴り声を聞きながら、大樹はこぶしを握りその手を見つめた。これで、ようやくまた一歩、正義の味方に近づける。ドアを打ち付ける音を背後に聞きながら、大樹は一人、幸せをかみしめるのだった。
***
校舎の前には人だかりができていた。その正面には舞台装置が組まれており、匡はその裏手に怪人の恰好で出番を待つ。暑苦しいので、顔部分を脇に持ったまま。
そこに青の全身タイツをまとった木織がやってきた。そこには胡散臭いほどのさわやかな笑顔が浮かんでいる。
「おい、案内人。お前、季に近づいてるらしいが、変なちょっかいかけんなよ?」
「これはこれは、庭村君。その恰好とても似合っているね。まるで本物の悪の怪人のようだ」
匡の言葉に答えず、代わりに目線を上下させて彼の見た目を褒める。もちろん匡にとってそれは褒め言葉にはなっていないので、鋭い視線に射貫かれることになるのだが。
「ふむ……それは、レッドに言われたのかな? 君を悪役にするために、彼の言うことを君が聞かなければ、俺が季君に危害を加えようとすると?」
急に真顔に戻った木織に、匡が臆したように頷く。そしてすぐに否定した。
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