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ヒーロー計画22
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疑わし気に目を細めながらも近づくと、その財布をもぐようにして奪い取った。すぐにまた一定の距離を保つと、威嚇する。
「だから言ってんだろ? 俺が言った約束は守るって」
「嘘つくな。お前、これっきりだって言ったのに、またよろしくとか抜かしやがって……っ」
「嘘じゃねえよ。俺はこれっきりだなんて一度も言ってねえ」
「んなっ……っ。あ、いや。た、確かに言ってねえ。言ってないけど、クソっ。なんだこの敗北感は……」
いくらでも反論や言いようはあったはずなのに、気が付くと大樹のペースに持って行かれている自分自身のふがいなさに、匡は胸のあたりを抑えながら愕然と地面を見つめる。
素直すぎる彼の反応に、大樹は思わず口元をニヤつかせる。
「ほら、俺も鬼じゃねえ、月に1回怪人やってくれるってんならもう追いかけまわしたりしないし、弟のことも手を出さない」
「本当かっ。約束だぞ!」
大樹のタイツの襟ぐりを両手で握りながら、伸びることも厭わず締め上げてくる匡に、
「約束する。するから手を放せっ」
大切な衣装をダメにされてはかなわないと彼の腕を振りほどく。若干伸びてしまった首部分にしょんぼりと視線を落とす。
「まあ、また作ってもらえばいいか……」
匡に聞こえないように呟いて、そのまま彼を見やると、
「というわけで、お前も晴れて風紀委員の一員となったわけだ。風紀委員はほかの委員会や部活なんかより入れる基準が厳しいから憧れの的だぞ」
親指を突き立ててウィンクを向ける。
ものすごく嫌そうな顔をした匡に、
「また追いかけまわすぞ」
すかさず一言いうと、
「や、やったね!」
ぎこちなく口元をひくつかせて、慣れないウィンクを披露した。最高潮に凶悪で邪悪で醜悪で、目の血走ったウィンクに、大樹は思わず噴き出した。
「お、お前。ビックリするほど似合ってねぇ」
周りに彼を良く知る人がいたらさぞ驚いていたことだろう。腹を押さえて、体を半分に折り曲げる。あからさまに感情を表に出して笑う大樹の姿を、匡は軽蔑を込めた半眼で見据えていた。
「……お前に言われたくねぇ」
その言葉が、大樹の笑いのツボを掘り起こし、ついには地面に膝をつく。
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