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ヒーロー計画23
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「ヒ、ヒィッ! ころ、殺される。笑い死ねるっ」
苦しそうに呻く大樹にこれ以上付き合っていられないと、空を仰ぐ匡の耳に授業開始を知らせるチャイムの音が聞こえてきた。
「おい、1時間目始まるっ」
目を丸めて焦った匡が大樹の背中をバシバシと叩くと、ようやく笑いを収めた彼が深呼吸しながら立ち上がる。
「問題ない」
口元はいまだゆるゆるなままだったが、またどこから取り出したのか紙とペンを取り出すと何やら書き始めた。匡は覗き込みながら、首をかしげる。
紙には『庭村匡は、風紀委員長である水渓大樹の緊急を要する仕事の手伝いで授業に遅れることとなりました。寛大な処置を願います』達筆な字でそう書かれていた。
「これで問題ない。これを教師に渡せ」
自信気に紙を渡す大樹に、だいぶ疑いの視線を向ける匡。
「こんな紙っきれ渡したところでどうなるんだ?」
「お前は、俺のすごさを分かっていない。とにかく言われた通り渡せばいいんだよ。それですべてがうまくいくから」
偉そうに言う大樹にそれでも納得いかない様子だったが、時間の経過は止まらない。匡はあきらめたように嘆息を漏らすと何度か振り返りながらも去っていった。去り際に、
「約束、絶対に破るんじゃないぞ」
そう、念を押すことを忘れなかった。
匡の姿が完全に見えなくなってから、大樹は校舎裏でひと際存在感のある桜の木を横目で見やり、ゆっくりと何かに怯えるように肩をすくめると、そっと息を吐くのだった。
***
「もー。きょんきょんったら、あの桜乃の授業に遅れてくるもんだから冷や冷やしちゃった」
小柄で釣り目のネコ集団のリーダー格だった少年が、猫なで声で匡の首に抱きつく。彼の名前は猫屋敷幹孝。どこまで行っても猫が付く。大樹に集団を解散させられた後、諦めることなくアタックし続ける猫屋敷に匡が折れて今の形に収まった。
「そうだよ。服装検査のときも急にどこかに行っちゃうから僕もびっくりしたよ」
「……ああ、あの変態野郎が全部悪い」
「変態野郎って、水渓先輩のこと? あの人近寄りがたいくらいカッコいいし、正義漢の塊だって聞くけど、というか、本当に怖かったけど。でも変態って」
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