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ヒーロー計画31
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「……別に、どうでもいいじゃねえか」
言葉を濁す匡に、部屋の前に立ち鍵の束から鍵を探す大樹が眉をしかめる。
ドアを押し開けると、ホテルの一室のような清潔感のある部屋が現れた。クイーンサイズのベッドが置かれているが、圧迫感はなく広々としており、鏡や本棚、クローゼットなどの家具は年季が入っているが古臭さなどは感じられない。この部屋の照明もシャンデリアで、窓枠も凝った作りをしている。品のよい調度品の数々に、匡は寝ぼけ眼を少し開いて驚きを表した。
「他の部屋もこんな感じなのか?」
「まあ、大きさはいろいろだが、大体こんなもんだろ。ほら、これがこの部屋の鍵。別に誰もこの屋敷に物取りに入ろうなんて考えないだろうが、念のため持っとけ」
「それは、お前も持ってんのか?」
「あたりまえだろ? この屋敷の所有者だぞ」
当然のように言う大樹。
期待はしていなかったがここでも匡のプライベートはないらしい。眠気の限界が来ていた匡は、適当に相槌を打つと大樹を追い出した。
匡はベッドに倒れ込む。すぐに意識を手放した。
鍵の束を指でくるくると回しながら階段を降りる。ヒーローショーを開催して以来消えないモヤモヤの正体を掴むべく匡をなるべく近くに置き観察してみるのだが、どうもうまくいかない。それどころか、彼の態度が新鮮で心地よく気が付くと1日が経っている。
多少強引な方法で別荘に連れてきたのも、観察のためなのか、ただ一緒に居たいだけなのか。大樹は強引に頭を振って考えを打ち消すと、自分のキャリーバックを持って寝室へ戻る。
大きな屋敷に二人だけ。夜は、深々と更けていく。
翌日。匡は携帯電話の着信音で目が覚めた。それを見計らったかのようにドアが開く。重たい目をこじ開け、携帯を掴むと着信ボタンを押す。大樹がベッドの縁に腰掛けた。
「何か用?」
電話相手と大樹。どちら共に対しての言葉に、大樹は声を出さずに飯だと口だけ動かす。それからその場から動かない大樹にうなずくと、電話の内容に耳を傾けた。
「は? そんないきなり無理に決まってんだろ――いや、送ったって……ここにか? 分かったけど、いきなり過ぎる。相手にも聞いてみないと、なんだってそんな急に――思い立ったら吉日って、周囲に迷惑かけてまで押し通すなよ……――別に怒ってはないけど――」
何を話しているのか見当はつかないが、たまに聞き漏れる男性の声色は聞き覚えがないこともない。大樹が不思議そうに匡を見ていると、電話を終えた匡がバツの悪そうな顔をして口を開いた。
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