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ヒーロー計画38
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「駄目だ」
「…………」
大樹の言葉に、匡は渋々起き上がる。
「テスト勉強で久しぶりに徹夜したら夜眠れなくなった」
嫌そうにもごもごと言う。大樹は一瞬あっけにとられ、それから眉尻を下げて口角を上げる。悲しんでいるのか楽しんでいるのかよく分からない表情を浮かべた。
「そんなに、別荘行きたくなかったのか?」
「あ? というより、勝負に負けたくなかっただけ。でも、当日も眠いし怠いしであんま覚えてないし碌なことがなかったけどな。……ほら、話してやったんだからいいだろ。もう寝かせてくれ。時差もあるだろうし、式中に寝るとかありえないからな」
匡は大樹のことを見もせずにゴロンと横になる。何も言い返してこないのをいいことに、彼は瞬く間に眠りに落ちた。
上空からの景色は格別で、しかしそれを堪能する者はこの機内にはおらず、大樹は彼の丸くなった背中に顔だけ向けて見つめた。そして、ゆっくりと目を閉じる。腕で顔を覆うと、リクライニングを倒す。それでも、彼はいつまでも眠りにつくことはなった。
***
真夜中。ほとんど日付が変わりそうになったころ。
「あー、えっと。どうしてこんなことに?」
「……知らねえよ」
ようやく到着した大樹と匡が、宿泊予定のホテルの前で季たちと対面を果たしていた。ジェット機の中ではそこまででもなかった機嫌の悪さがマックスに達している匡に、大樹が呆れたように言葉を口にする。
「なんだよ、お前が飛行機飛ばせとかいうから連れてきてやったのに」
「お前が俺の航空チケットどこかに隠して、それを探してるうちに時間が過ぎたせいだろうがっ。それに付いて来いとは言ってない」
余裕の態度を崩さない大樹に、匡はギロリとねめつける。
何がそんな機嫌を損ねることがあったのか、空港に到着して家族に連絡を入れている匡を一人残して晩飯を勝手に食べたことか。フラフラと空港を散策し、呼び出しを食らったことか。暇だったので彼の荷物を勝手に受け取り、荷物が紛失したと激怒する彼を遠目から見ていたことか。タクシーの運転手に目的地と反対の場所を指示し、どんどん不安顔になっていく彼を心中で笑っていたことを怒っているのだろうか。
心当たりが多すぎて大樹には分からない。
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