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ヒーロー計画42
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匡の襟首をつかんで他には聞こえないように愚痴ると、
「お前、了見の狭い奴だな……別に二人とも無事だったんだし、そんなのどうでもいいだろ」
「りょ、りょうけ……」
軽蔑の含んだ視線を向けられ、撃沈。言い返しては図星を指摘されたと言っているのと同じだと、思いとどまり深呼吸を繰り返して気持ちを落ち着ける。
最悪だ。その場から離れた。頭を掻きまわして、
「俺は、何をしているんだ……」
海外で、彼は途方に暮れたようにそうこぼした。
結婚式は予定通りに行われた。新郎が理事長だったことや季が号泣したことなど、話は尽きないが、大樹にとってはそんなことはどうでもよかった。とにかく帰りたい。こんなしっぽを巻いて逃げ出しているような感覚に陥ったのは初めてだった。何から逃げているのかも定かではないが、今の自分がとても醜悪なものに感じた。
涼のワゴン車が走り去ったのを見届けると、
「じゃあ、あの姉ちゃんもいなくなったことだし……」
大樹がポツリと言い、誰かが反応する前に匡を脇に抱き上げる。
「俺らはもう帰るから」
「は? 何言ってんだてめえ、俺は季と買い物行く約束っ、」
「うるせえよ」
「ちょ、こら放せっ。というか、降ろせ―!」
そのまま連行し、タイミングを見計らったように乗り付けたタクシーに投げ込んだ。もちろん、タクシーは先に呼んでおいたものだ。
匡が後ろの窓ガラスを叩きながらなにやら叫んでいたが、運転手に行き先を告げる。誘拐かと不審がられるも、人当たりのいい笑みを向けて彼は家族との別れを惜しんでいるのだと嘯いておいた。嘘は言っていない。
ジェット機の中でも終始無言で不機嫌な匡を見ながら、さて、どうしたものかと考える。
「いい加減機嫌直せって。飴やるからさ」
「…………」
「なんだよ、お前。飴って言ったってそんじょそこらの飴じゃねえんだぞ」
「……いらねぇ」
「遠慮してんのか? そんなのいいから、ほら」
機内に置いてあった飴の封を切ると、匡の口に無理やり押し込もうとする。しかし、彼は頑なに口を割らない。飴を食べさせたい大樹と別に食べたくもない匡の攻防が無言で行われる。
「やめ――っ! カハッ」
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