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ヒーロー計画44
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「入れてみるか?」
「……しぼんだぞ。砂糖溶けないし」
「まあ、一応それっぽいからいいんじゃないか? あれだよ。見た目より味が大事だって」
「味は、いいのか?」
「俺に聞くなよ」
不穏な会話を続けていると、外で何やら叫び声が聞こえてきた。別荘の中にまで聞こえてくるということは、とんでもない音量で叫んでいることになる。
「近所の奴らか?」
「いや、声が聞こえるほど近くに別荘はない。ちょっと見てくるから」
「は? じゃあ、クリーム塗るから塗るもの。ヘラとかないか?」
「そんなの知らねえよ。あー。ほら、これでいいんじゃないか?」
外の声が気になって仕方がない大樹は、適当にあった調理器具を掴むと匡に渡して出ていった。お菓子作りに疎いどころではない匡は、それがフライ返しであることにも気が付くことなく、作業を開始した。
「クソッ。なんでこんなに塗りにくいんだ?」
「おい、仕上げは残しとけよ!」
玄関から叫ぶ。返事は聞こえてこないが、問題はないだろう。
玄関を出ると二人組がいた。小さな瓶底眼鏡とピアスの優男。
「おい、うるせえぞ」
無意識に高圧的に声をかけていた。理由など自分が知りたかった。
千里は驚いたように口を開け、季が怯えたように振り返る。
「俺の別荘の前でなに叫んでんだ。クソッ、いいところだったのに……さっさと消えろ」
大樹は不機嫌そうに彼らを見下ろす。
なぜ彼がいるのかよりもファンシーなエプロンを着ていることに驚いているのだろう。しかし、気軽に理由を聞くような雰囲気でも仲でもない。
「……あ、水渓さん?」
冷や水を浴びせかけられたように我に返った千里が、地面に膝を着けたままで見上げる。
「ん? あ、お前ら」
そこでようやく知り合いであることを認識した大樹が、警戒を解いたとき、
「おい、何してんだっ。仕上げはお前がしたいからって待ってんの、に……? あ、え。……と、季? な、何でお前ら」
ほぼ同時に扉が開かれた。そこから大樹とおそろいのエプロン姿の匡が顔を出した。手にはフライ返しが握られたままだ。
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