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ヒーロー計画45
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沈黙。彼らのありとあらゆる感情が一気に駆け巡り、辺りは一時完全な無の状態へ陥る。
「……これは、一体どういう状況なんだい?」
木織が膠着状態の4人を見つけるまで、その状態は続いた。彼の別荘に今日到着したばかりの季たちは、暇を持て余して探索に繰り出していたようだった。
彼らとはそのまま何事もなかったように別れた。別荘に戻る。
「ケーキはどうなった?」
「……この有様だが?」
エプロン姿を季に見られて肩を落としていた匡が、投げやりに言う。
元は円柱だったはずのスポンジケーキは、デロリとした緩い生クリームによって形容しがたい形状に装飾されていた。
「あー、まあ。食べられないことはないだろ。イチゴ乗せるのは俺に任せとけ」
口元を引きつらせながらも、切り立った山々のような土台にイチゴをトッピングしていく。乗せられるだけ乗せて、クリームを無理やり平らにすると何とか見られる形にはなった。
「初めて作ったにしちゃ、いいんじゃね?」
側面には所々スポンジの地が見えているところもあったが、見て見ぬふりを決め込んだ。食べた感想は、
「……ああ、スポンジケーキは上手いな。あと、イチゴも」
「なんか、ジャリジャリする。……けど、スポンジ部分とイチゴは成功だな」
上々だった。もちろん嘘だった。
「禁止令がだされるくらいだからもっとひどいかと思ったけど、これくらいならまだ可愛い方じゃねえか」
「どんな想像してたんだよ……俺だってこれくらいは大丈夫だ」
何一つ大丈夫なところなどなかったが、大樹の大変前向きな感想に、匡も悪い気はしないのか鼻高々に笑みをこぼす。
「じゃあ、明日は本番の料理ってことで。一から作ってみろよ。ケーキ作れるなら普通の料理くらい朝飯前だろ」
「かもな。俺、小さい頃のこと無意識にトラウマになってたのかも。禁止令出されたのだってだいぶ前だし、今やればできるかもしれないな」
大樹の口車に乗せられて、匡も乗り気になっていた。
飛んだ生クリームでベタベタの床に、乱雑に放置されたままの調理器具。9割がた完成していたものにただトッピングを施しただけ。それすらも微妙な出来なのに、一から料理をしてきちんとしたものができるのか。そんな心配が欠片も頭をよぎることのなかった匡と大樹。次の日悔やむことになるのは必至だったが、グロテスクなケーキを囲む彼らはただただ楽しそうに笑いあう。
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