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ヒーロー計画47
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季が駆け出した。そして、
「だ、大丈夫か!?」
勾配の付いた道で見事な一回転を披露して、尻もちをつく。もちろん故意ではないことは明らかで、呆然と座り込んだままの季に、千里が慌てて駆け寄っていた。
「あ、うん。びっくりした……何が起こったのかと思った」
正面を見据えたまま目を瞬かせている季を見ながら、
「すげーなお前の弟。前も思ったけど、面白そうな奴だ」
眉を上げて興味深そうに呟いた。
「お前……弟に手は出すなって言ったよな」
匡がその声にようやく反応を示し、
「ああ……焼きもちか?」
「……馬鹿じゃねえの」
大樹の不敵な笑いに口を閉じる。
そのまま彼ををキッと睨みつけると、季へ足を向けた。
いつもならもっと怒鳴っているところだが、それがなく、大樹は疑問を抱きつつも彼の後を追った。
「ご、ごめん、治良。匡にぃがいたのが嬉しくて」
「いや、謝んなって。怪我がないならよかったし。ねえ、匡先輩」
千里が思い切り引き攣った顔で、駆け寄ってきた匡に声を掛ける。
「ん、ああ。季、立てるか?」
匡は千里への返答もそぞろに季の腕を引き上げると、自らの肩に抱き寄せて、そのまま勢いをつけて立たせる。心配そうにする匡に、季は強がりを言って、
「匡にぃ、大丈夫だって。痛っ……ちょっとひねったかもしれないだけで」
それでも痛みには耐えきれず。結局恥ずかしそうに、嬉しそうに匡に甘える季。その姿を悔しそうに見ている千里を、
「馬鹿じゃねえの」
大樹はそう小さく言って視線を逸らした。
誰にも聞こえることのなかった呟きは、誰に向けられて放たれた言葉なのか。それは大樹にも分からなかった。
別荘の大広間に通されたところで、大樹は、当初の目的を思い出す。
「お前ら暇なら、食事会に招きたいんだが」
もちろん、完全な嘘を言っているわけではないが真実は言わない。遠回しの提案に、木織は嬉しそうに顔をほころばせた。
「聞いてくれたまえ。みんな」
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