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ヒーローとは
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「……だいたいな、俺は戦隊ヒーローが好きじゃないんだ」
「は? 俺に喧嘩売ってんのか」
二人は匡の部屋にいた。
重たい空気に耐えかねた匡が、風呂に入ると宣言するなり食堂から出ていき、宣言通り風呂に入る。部屋に戻ってくるとなぜか大樹が我が物顔でベッドを独占していたのだった。
「たった一人の怪人を5人がかりで倒すとか、理不尽にもほどがあるだろう」
「馬鹿か。その怪人を倒す前に雑魚共が無限に湧いてきてるだろうが。それに、人数は関係ねえ。悪いことをする奴はどんな手を使ってでも抹殺すべきなんだよ」
「……で、機嫌は直ったのか?」
饒舌に語る大樹を見ながら、匡が不意に問う。
「別、に……機嫌が悪かったわけじゃない。ただ、調子が悪かっただけだ」
「頭のか?」
「殺すぞ……」
「曲がりなりにも正義の味方気取ってるやつの言うセリフじゃねえよ」
いつもの調子に戻ってきた大樹に、匡が鼻を鳴らす。カラカラと笑う彼に、大樹は、
「悪かった。飯のことと、その……変なこと口走ったのも。忘れてくれ」
頭を垂れて素直に謝って、その殊勝な態度に匡は身を引いて不審がる。真剣な表情で、
「なんか、お前。キモイな」
大樹を見据える。生まれて初めて吐かれた暴言に大樹は目を見開いて、
「謝ったのに何て言い草だ……キ、キモイって。何だキモイって……」
衝撃を受ける。
「変態ストーカー野郎はいいのにキモイはダメなのか? お前の基準が分からん」
「全然違う。前者は俺が認識したうえでのお前の戯言だと割り切れる。でもなんだ。キモイってっ。気持ち悪いと略さず言われるより傷つく。その軽い感じが余計に嫌だ」
「その細かいとこにいちいち傷ついてんのも、アレだな……一瞬でも心配した俺が馬鹿みたいだ。もう、部屋戻れよ」
匡は居たたまれないように呟いて、ショックを受けたまま俯いている大樹の肩に手をかける。
「嫌だ」
匡の手を振り払うと、大樹は懐から小さな箱を取り出した。ショックからは立ち直った。
「まあ、とりあえずやる」
「はぁ?」
手のひらサイズの正方形の箱をずいっと押し付ける。黒い包装紙に包まれた得体のしれない箱に、匡は眉根を寄せて受け取ろうとはしなかった。当然の拒絶反応だが、大樹はもちろん気に食わない。
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