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ヒーローとは5
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背後から少し遅れて匡がやってくる。
小さく息を吐いて振り向くと、いつも通りのふてぶてしい笑顔を向けた。
「……お前、友達いないだろ」
食堂で向かい合いながら朝食を食べていた匡が、ふと手を止める。彼の言葉に、大樹が心外だとばかりに首を横に振った。
「何言ってんだ? というか、なぜそう思う?」
「だってお前、学校でもここでも俺にべったりじゃないか」
「友人ならいる。それとお前に俺がべったりだということと何の関係があるんだ?」
匡がそこは否定しないのかと小声で呟いて、それを大樹は耳聡く聞き取って、
「まあ、事実だしな。だが、なぜ友人に対してお前と同等の態度を示さないといけないんだ?」
「は? それが友達ってもんだろ? まあ、別にべったりしろってわけじゃなくて、仲良く? というか、その友達に遊んでもらえよ。そして、俺を開放しろ」
「お前の話はいちいち要領を得ないな。なぜ、その友人と俺が仲良く遊ばなくてはいけないのかって聞いてんだよ」
「だから、それが友達だって言ってんだろうがっ」
淡々と話していたはずなのに、互いの言葉が噛み合わずどんどん語気が荒くなっていく。食器を揺らして匡が立ち上がる。怪訝な顔の大樹を見下ろして、
「……お前の友達の定義って何?」
「利害が一致した者同士が互いに利用しあう関係、だろ?」
「ち、げーよっ!」
上半身を逸らして否定する。
「じゃあ、何なんだよ?」
「辞書引け。辞書っ。ほら、一緒に遊んだり喋ったりする仲のいい人、親しい人って。お前の定義は根本から外れてんだよ」
「…………っ」
大樹は、目からうろこが落ちたように匡を見つめたまま静止した。匡はそんな大樹に衝撃が隠せない。眉をひそめて彼を見た。
「マジか……じゃあ、風紀委員の人たちは友達だろ? 一緒に馬鹿みたいなコスプレしてるし」
「馬鹿みたいじゃねえ。俺たちは真剣だ。そして、あいつらは同志だから違う。お前の言う意味合いでも違う気がするし……あっ、お前はどうだ?」
パッと表情を明るくさせた大樹の言葉を、
「ちげーよ」
即答で打ち消した。ビクリと肩を震わせてショックを受ける大樹。
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