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ヒーローとは6
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「そ、そうか……あ、俺ちょっと今日食欲無いから、これ食べるか?」
目をしょぼしょぼさせながら、匡に皿にパンをよそう。そのまま食堂を後にする。背後から聞こえてくる怒りと呆れの声は無視する。これ以上動揺を隠し通すことはできそうにない。
部屋に戻ると、携帯電話のアドレス欄を開く。知人、友人フォルダをすべて消した。次に風紀委員フォルダを開くとブルーの文字を押す。番号が表示され、数コールの後電話口に相手の陽気な声が聞こえてくる。長々と前口上を垂れようとする彼を押しとどめると、今からそちらに行く旨を短く言って、通話を一方的に終了させた。
***
「……つまり、君は友達の定義を見直され、一番仲がいいと思っていた庭村君に友達ではないと拒絶されてショックを受けたから、あんな一方的な連絡を俺によこしてきたということだね。俺としては、君が彼に対する対応を見ていてなぜ仲がいいと思えていたかのかが不思議でならないけれど。そんなの、今までの君なら一笑しておしまいだったじゃないか? 何を今更……」
「お前、そんなはっきりと言わなくても……性格悪いな」
「君にだけは言われたくないけど。俺だって季君たちと楽しく遊びたいのを我慢して今ここで君の相談に乗ってあげているんだから、もう少し敬意を払ってみてはどうだろうか?」
木織の部屋で我が物顔の大樹に、木織がため息を吐く。
「だってよ、あいつの言い分で言えば、俺とあいつはどう見ても友達だろ? 別荘にだって着いてきたぞ」
「ああ、君に強制連行されてね」
「ゲームしたり遊んだりしてるぞ」
「無理やり君が彼の部屋に押しかけてるんだよね」
「でも、話しかけたら返してくるし」
「無視なんかしたら後で面倒だからじゃないかな?」
「……そんなに俺と居たくないなら帰ればいいだろ」
「帰ったら後で面倒だからじゃないかな?」
「…………」
「ん、帰るかい?」
シレっと言う木織に、大樹は半眼で睨む。
「いや、非常に腹立たしいが……」
そう言って、大樹は本題に入る。視線を正すと少し前のめりになり声を抑えた。
「あいつらが転校してきた本当の理由ってなんだ?」
木織は少し目を見開いて、そして笑みを浮かべた。
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