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ヒーローとは7
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「それを聞いて、君はどうするつもりだい?」
声音は先ほどと変わらないのに、威圧感のある問い。
「別に、どうもしねえよ。ちょっと気になっただけだ……」
「そういうことは、本人に直接聞けばいいのに。というか、いつもの君なら疑問に思ったことをいちいち他人から聞くことなどしないだろう?」
「……なんとなくだ。なんとなく」
「まあ、深くは聞かないけれど。……君変わったね。ああ、もちろんいい方向でだよ」
苦虫をかみつぶしたような表情で言葉を濁す大樹。木織は、肩眉を上げる。
「いやはや、恋愛が人をこうも変えるとは、面白いものを見た」
「は、何言ってんだ?」
「おや、無自覚かい? まあ、それも一興」
木織は、小首をかしげる大樹に思わず失笑をこぼす。
「だから、意味が、」
「とりあえず、話は聞いたし、これ以上ここにいても建設的な話はもうないよ。だから、帰って彼にちゃんと謝るといい。どうせ彼一人ほっぽって飛び出してきたんだろし」
「あっ」
帰り道。
大樹はこれまでの匡に対する蛮行や木織に言われた言葉を思い返していた。自分がやられて嫌なことを率先して行い、強制、脅迫、無理強い、様々な嫌がらせを課してきた。なぜそこまでして彼を近くに置きたかったのか。他の誰でもない彼を。嫌がる顔をみるのも楽しかったのにそれが嫌になってきたのはいつからか、笑っていてほしいと思い出したのはいつからか。友達の意味をはき違えていたことに気付かされたとき、匡に友達ではないと否定された時どうしてこんなに胸が押しつぶされそうな気持になったのか。
結論は火を見るよりも明らかだった。
大樹は、気が付くと別荘への道をひた走っていた。
自身の別荘へ戻ると、匡の部屋へ直行した。
「……何だよ」
ベッドの上でうつ伏せに雑誌を読んでいた匡が、ドアの前で自分を無言で見下ろす大樹に鋭い視線を向ける。
「あ、いや……」
彼の視線に口を噤む。
「マジでなに? 言いたいことがあるならはっきり言えよ。気味が悪い」
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