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ヒーローとは8
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雑誌を置いて起き上がる。誰がどう見ても今の大樹は変だった。
「……いや、本気でここが嫌なら出て行ってもらっても別にいいって言いに……」
「は、はぁ? 何があった? どうしたんだ? 道端に落ちてる毒キノコでも食ったんじゃねえの? それとも俺が幻覚見てんのか?」
あまりの変貌に匡が口をあんぐりと開けた。とりあえず大樹を落ち着けるためにベッドに座らせる。その横に匡が座り覗き込むと、彼はびくりと肩を震わせて身を引いた。
「……意味が分からん。出会った時から理解できたことなんて一つもないけど、それ以上に意味が分からない。理由を簡潔に分かりやすく言え。出ていくのはそれからにする」
「出ていくのは決まりか」
「当たり前だろうが」
大樹は、肩を落とした。
「さっきまでブルーのとこにいたんだ。ちょっと相談事乗ってもらってた」
「それが今のこの現状と関係あるんだな?」
「ああ、まあ。というより、お前から友達の定義を聞いてから俺は他の人とちょっと違うんじゃないかと思えてきて」
「今更だな」
「……そ、そうか」
「いちいちショック受けてんじゃねえよ。俺が悪いみたいじゃないか」
「ごめん……」
「お前、本当に水渓大樹か? キモイを通り越して怖いぞ」
困惑する匡を前に、大樹はシュンとうなだれたまま話をつづけた。
「まあ、何だかんだ相談したことを帰り道に熟考してみたんだ。それで、俺はお前のことを友達だと思っていたようなんだ。それをあっさりと否定されて結果的に落ち込んでしまったのではないかとの結論が出た」
「なんでそんな他人事なんだ?」
「俺がそんなことを思うような奴に見えるか?」
匡は黙って首を振る。
「自分でも信じられないと。まあ、俺も信じがたいけど。で?」
「は?」
「だから、結局どうしたいんだ?」
「……その、つまり。俺はお前と友達になりたいと思っている、らしい」
「そうか。だが、俺はお前と友達になりないと思ったことなど一度もない」
それまで俯いていた大樹が顔を上げた。冷たい物言いの匡を見上げると、その表情はさながら悪戯っ子のようなもので。にやりと口角を上げて大樹を見ていた。
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