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店内の掃除をささっと済ませ、道具を片付けにきた。と、目の前に何か落ちているものを発見する。
「ん? なんだこれ」
拾い上げるとそれは、魔法少女のような黄色のコスチュームを着た女の子のマスコットで。なんとも奇抜な髪型をしている。
あれ、このキャラクターどっかで見たことがあるような……
「あ、あの! そ、それ、ぼ僕のですっ」
「え……わっ!」
背後を振り返るよりはやく、物凄い勢いで岸本さんが駆け寄り、俺の手からマスコットを奪い取った。あまりの取り乱しっぷりに少し驚く。
我に返った岸本さんはハッとした顔をして勢い良く頭を下げた。
「すすす、すみません!!」
ぎゅっと大事そうにマスコットを握り締めながら謝る岸本さん。そんなに大事なものだったのか。
「大丈夫ですよ。それよりもそれって……」
「いや、これはその…」
アニメのキャラクターだってのは分かるんだよな。
魔法少女のようなコスチュームに、特徴的な髪型。黄色のカラー。ミニサイズのマスコットだけどこれって確か……
「魔女っ子☆ゆめたん?」
「!!知ってるですか!?」
おおう、びっくりした…。食い気味で反応する岸本さんはいつものおどおどした感じじゃない。瓶底メガネの奥の瞳が一瞬にしてきらめいたのが分かった。
「え、ええ。日曜の朝にやってるやつですよね」
「そ、そうです! ふぉぉ…、まさか『まじょゆめ』を知ってる人がこんなに近くにいるなんて…」
知ってるって言うか、朝早くに起きた時にTVつけたらたまたまやってたのを観たことがあるぐらいなんだけど。
それでも知ってる人が身近にいるのが嬉しいのかさっきから岸本さんの体が震えている。
もうちょっと詳しく話してみようかと思ったところ、
「エマちゃーん。夏樹くぅん、ちょっとこっち手伝ってくれるかしらー」
阿部さんの声が聞こえて、意識がそっちに向く。完全に岸本さんとの会話が断ち切られてしまった。仲良くなれそうなムードだったのに!
くそ、こうなったら……!
「岸本さん! あの、良かったら…帰りに喫茶店でも寄りません? もう少し岸本さんとそのアニメについて詳しく話したいなって」
大胆にも誘ってしまったけど、断られたら、なんて考えてない。
だって岸本さん、
「っ、是非!!!」
俺が不安になるよりも早く、嬉しそうに返事してくれたから。
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