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5月9日(土) 日差し
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休日の校舎は静かで、人の気配が全くと言っていいほど無い。
それ故に、廊下を歩く足音はやけに大きく響く。
「…はぁっ」
渇いた喉を押さえて、俺は生徒会室へ向かっていた。
窓から射す日差しが眩しく、暑く、肌を焼く。
喉が渇くとまともに日向で生活することもままならない。
早く、早く欲しい。
「───…っ」
生徒会室の扉を開けると、俺を待つ人影がひとつ。
「おはよう、ユキ」
金髪に朱色の瞳。
休みの日までここに来ているのは、彼だけ。
「高原先輩…」
おぼつかない足取りで、俺は先輩が座っている椅子の前まで歩み寄る。
「どうしたユキ、顔色が悪いな」
「っ…」
…知っているくせに。
俺がここに来る時、どうしたかなんて全部分かりきっているくせに。
もう何ヶ月も前から、俺は先輩の血を吸いにここへ来ている。
それなのに今日の先輩は、何故かとぼけたふりをする。
「先輩…っ」
俺はしなだれ掛かるように先輩の両肩に手を置き、額を肩に埋めた。
先輩の香りがする。
息を吸うたびに、体を満たしていく。
「───離れろ、ユキ」
俺が歯を首筋に当てる寸前、穏やかな制止と共に先輩は体を離した。
「え…?」
席を立った彼の足元に、俺は力なくへたり込む。
「もう、おまえに血をやることはできない」
「なんで…っ」
先輩の目は、静かに俺を見下ろしていた。
「帰れ。もう来るな」
高原先輩は俺を置いて、生徒会室を出て行く。
「おまえの部屋に、俺と同じ血を持ったやつが居るだろう」
「高原先輩!!」
「喉が渇いたならあいつのところへ行け───雪町」
俺に背を向けたまま、そう言い残してぴしゃりと扉を閉めた。
「───……」
静まり返る生徒会室。
喉が渇いていたのも忘れて、俺はしばらくその場から動けなかった。
───なんで。
なんで、急にそんなこと…。
どうして俺は捨てられたんだ。
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