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5月14日(木) 変化
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雪町が、朝飯を食いに行くと言うので。
雪町が、夕飯を食いに行くと言うので。
その度に、僕は雪町について行った。
「───最近、いつも一緒に食べてるね」
朝の食堂で、雛貴と夜久に会う。
「雛貴も、いつも夜久と一緒だろ」
「あ、ほんとだ」
雛貴の隣で、背の高い夜久が眠たそうに大あくびをした。
「仲良くなれたみたいだね」
屈託なく笑う雛貴に、僕は少し照れてしまう。
「まぁ僕たち、ちゅ───んぐっ」
瞬間、雪町の手で口を塞がれた。
「んむ、む!?」
僕の口をつかんだまま、雪町はその場を離れる。
「んんっ!?」
頬に指が食い込んで痛い。
「…おまえは」
いつも座る隅のカウンター席まで来て、やっと雪町が手を放してくれた。
「何を言おうとした」
「何って、ちゅ───ふがっ」
言いかけた口がまた塞がれる。
「大声で言うな馬鹿」
僕より少し背の低い雪町が、上目遣いで睨んできた。
可愛らしくて、僕はくすりと笑ってしまう。
「じゃあ、大声じゃなきゃいいのか?」
「は?…ちょっ」
僕はすっと雪町の耳に顔を寄せた。
「僕たち、ちゅーした仲だし?」
「っ…!」
顔を赤くした雪町が、僕の顔面を鷲掴みにする。
めりめりと音を立てて、指が頬骨を抉った。
「いいいいっ!いひゃい、いひゃい!!」
───痛い、痛い!!
「人前でそのセリフを言ってみろ、おまえの全身の血を吸い尽くして殺してやる」
低く小さな声で耳打ちされる。
「…ふぁい」
こくこくと頷くと、ゆっくり手が放された。
僕はじんじんする頬をさする。
…目が本気だった。
すたすたと歩いていく雪町を追いかけ、券売機の列に並んだ。
「よ、高原」
すると、後ろからぽんっと肩を叩かれる。
振り返ると、仙座と数人の生徒が僕たちの後ろに並んでいた。
「今日も一緒か、仲良いな」
…みんな同じようなこと言うな。
僕がそう思っていると、雪町が嫌そうな顔をする。
「良くない、着いてこられて鬱陶しい」
「ひどっ!」
その会話を聞きながら、仙座はけらけら笑った。
その周りで、他の生徒も微笑む。
「俺、雪町と話したことなかったから新鮮だなー」
「……」
雪町はきょとんとして、僕の方を見る。
「?」
僕が首をかしげると、ふいっと目をそらしてしまった。
「ずるいぞ仙座」
「え?」
仙座と一緒に並んでいた数人の生徒が、ぎろりと仙座を睨む。
「何がずるいんだよ」
「俺たちも雪町に話しかけたことないのに!」
「うわっ」
じゃれつくように、生徒が仙座にのしかかった。
「仙座たちも、仲良いな」
「仲良いっつーか、部活一緒なだけで───うおぁ!」
もみくちゃにされる仙座に、僕は思わず爆笑する。
…雪町は、やっぱりみんなから一目置かれている。
女のように華奢な体と、白い肌。
顔つきも綺麗で、見惚れる気持ちは良くわかる。
…けど、性格は意外と高飛車。
朝は弱いし、口は悪いし、素直じゃないし、いきなり噛み付くし。
「……」
───全部、僕しか知らない。
泣き顔だって、唇の感触だって。
───この先もずっと、誰にも知られなくていい。
「……」
…やばい。
「…僕、病気かも」
「あ?」
雪町が怪訝な顔で僕を見る。
「…っ」
雪町の目が、僕を映していると思うだけで顔が火照った。
…なんだこれ。
───なんだこれ!
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