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6月13日(土) 衝動*
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───柊の手は、気持ちがいい。
力強い割に細くて、男らしさはあまりないのに。
何故だか、すごく落ち着く。
この手なら、縋り付いても振り解かれたりしない。
そんな、根拠のない安心感を与えてくれる。
「奏士、大丈夫?」
「ん…」
息を整えながら、俺は頷く。
「3回目なのに、まだこんなに出るんだ…溜まってた?」
「うるさい」
目をそらすと、柊は苦笑して俺の中から出ようとした。
「っ、抜かないで」
俺はとっさに彼の腕をつかんで制止する。
「雪町?」
「おまえ、まだだろ」
きょとんとした柊の顔が、少しずつ赤らんだ。
「な、おま…疲れただろ」
口元を手で覆う動作で、にやけているのだとすぐ分かった。
「平気だ。だから…おまえも、気持ちよく……っ」
最後まで言う前に俺は羞恥に潰され、両手で顔を塞ぐ。
「俺だけイかされっぱなしは嫌だ!」
半ばやけくそになって俺は叫んだ。
その拍子に、後ろが収縮する。
「っ…」
中に、まだ熱を帯びたままの柊がいる。
───早く、俺の中で吐き出して。
「ごめん、じゃあ…もう少し、僕に付き合って」
「謝るな、俺が抜くなって言ったんだ」
いくらでも、この先も何度だって。
ずっと、こうしていたいんだ。
「…っ、あ…あっ」
後ろをかき乱す柊の熱が、前立腺を刺激する。
「すごい気持ちいい、奏士…」
「あっ、おれ…っ、も…っあ」
下の名前で呼ばれると、その声が頭に響いて離れない。
「奏士、奏士…っ」
「柊っ…あっ」
何度でも、呼んで欲しくて苦しいのに。
呼ばれるともっと苦しい。
息苦しくて、気持ちいい。
「んっ…ぅ」
しつこくて、強引なキス。
俺が必死にそれに応えている間に、柊の手は俺の下半身を弄る。
「やっ、あ…っ、は、はぁっ」
浅くなっていた呼吸が、柊のキスで少しだけ落ち着いた。
「はっ、…っ」
口にはあまり出さないけれど、柊は俺の呼吸をよく気にする。
感じすぎて呼吸を忘れる俺を、彼は忘れない。
「奏士…、っもう、出そう」
「んっ…おれ、も…っ」
柊の声から、余裕が消えていた。
「一緒に、イこ…」
「い、イくっ…あ、ああっ」
「…っ」
俺が絶頂を迎えるのとほぼ同時に、柊も体を震わせる。
涙でぼやける視界に、達する瞬間の柊の顔が映った。
「柊…」
手を伸ばすと、柊はひょいっと俺を抱き起こす。
「あー、気持ちよかった…」
声音が、いつもの馬鹿な柊に戻った。
俺を乗せたまま、ベッドに仰向けになる。
「おいで、奏士」
首を傾けながらそう言って、彼は目を閉じた。
「……」
差し出されたうなじに、俺は両手を伸ばす。
どくんと心臓が脈打って、唾液が口腔を満たした。
「───……っ」
俺は柊に覆いかぶさって、躊躇なくうなじに噛み付く。
「っ!」
痛みで身をよじる彼を押さえつけて、深く牙を刺した。
「はぁっ…はぁっ、ぅ…」
荒くなる柊の呼吸など気にも留めず、俺は夢中で渇きを癒す。
───頭が、おかしくなりそうだ。
甘くて、病みつきになる。
けど、これ以上は柊の身体に悪い。
「……」
俺は口を離し、体を起こした。
「…今日はがっついたなー、雪町」
額に汗を滲ませた柊が、無理に笑って見せる。
「ごめん」
「いーよ、いくらでも吸え」
「……」
やっぱり、人の血を吸った後の罪悪感はいつまで経っても消えそうにない。
飢えで自我を失いかける瞬間。
自分が怖くて、醜くて。
───また、自分を嫌いになっていく。
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