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6月26日(金) 敗北の味
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かっこ悪い、最悪だ。
「……」
「………」
昼休みの食堂。
僕と雪町は無言で向かい合い、互いに黙々と食事をとる。
「…おまえ、午後の部は出れるのか」
「うん」
「そうか、丈夫なんだな」
雪町がいつもより少し、ほんの少しだけ饒舌だ。
それがまた、僕を惨めにする。
僕が怜に負けた後、棒倒しは戦わずして3年生チームの勝利となった。
朦朧としていた僕にも、賑わう声は聞こえていた。
兄弟対決がどうとか、色々言われていた気がする。
───どうして、足を踏み出したんだろう。
勝てるなんて、思っていなかった。
だけどこの2年間、僕は負けを知らなかった。
きっと、思い上がっていたんだ。
僕は、馬鹿だ。
「───……」
食事を終えて、僕たちは学生寮に戻ってきた。
午後の部最初の、応援合戦の衣装に着替えるためだ。
「…雪町、軍服なんだ」
「おまえも」
黒い生地に、じゃらじゃらした飾り。
安っぽい金のボタンが、コスプレ感を醸している。
「雪町のチアリーダー見たかったなー…」
「……」
返事の代わりに、雪町はじーっと僕を見つめた。
「……っ」
居心地の悪い沈黙が続く。
「おまえ、先輩にボコられたぐらいでいつまで拗ねてるんだ」
僕はきっと、叱られた子どもみたいな顔をしているんだろう。
「雪町にかっこいいとこ見せたかった…のに、あんな……」
「…おまえな」
雪町はため息をついた。
「1回戦はおまえが旗をとっただろ。見てた、し…かっこ、よかったぞ……」
照れる雪町の声が小さくなっていく。
「ゆ、雪町ぃ〜」
僕は、ひしっと雪町を抱きしめた。
「泣いてんのか?」
「泣いてない」
「……」
雪町がそっと僕の頭を撫でる。
顔を見られないように、僕は雪町の肩に顔を埋めたのだった。
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