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『ニコとルドルフ』② By.Kuro
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「君が僕を運んだの…」
長身で見目麗しきルドルフは普段滅多と見せない微笑みをニコラスへ向けた。彼は拾われたその日からニコラスにだけ心を許している。
「運んだよ。だって机で寝たら風邪を引くだろ。俺と違ってニコは身体が弱いから」
ニコラスは北極に近いサンタ村に生まれ育ったのに寒さに弱い。度々風邪をこじらせてはルドルフが看病をしていた。冬の寒い夜空を飛び回るサンタにとって、それはあまり自慢できないことだった。
「最近忙しくてベッドで寝ていなかっただろ。心配だったから少しでも寝てくれて安心した」
「なんで…なんで起こしてくれなかったの。僕仕事の途中で…」
「大丈夫だよ。それよりパン焼いたんだ。ニコ好きだろ?クルミのパン」
「好き……そうじゃなくて!!ああ、僕!発注の最終データを送ってない!」
ソファから起き上がりデスクへ向かおうとしてニコラスは毛布に絡まって盛大に転んだ。
「ニコ!慌てなくても大丈夫だから」
「だって…だって…プレゼントがなかったら」
子どもたちが悲しんでしまう。
最新のゲームや流行りのオモチャをすべてリサーチしてデータを集めたのに。
絶望に足の力が抜ける。
「昨日ニコが寝た後俺が送っておいた。ほとんど終わっていたし、写真のサンプル資料も添付したから」
「うそ……」
事もなげにそう言ったルドルフ。ニコラスが何か月も頭を抱えていた問題があっさり彼の手で解決したことに拍子抜けする。
「…自分でやりたかった…僕がサンタなのに…」
前日までサンタ宛に届いた手紙の対応に追われ睡眠不足だったけれど、それでも仕事を投げ出し寝てしまうとは。ひとつの島国しか担当していないのに自分の手際の悪さが怨めしい。もっと大きな地区を任されている父や祖父はこんなミスを絶対しない。落ち込んでいるニコラスを励ますように、ルドルフが頭を撫でてくれた。
「追加発注はファックスでいいと交渉しておいたから」
「ルドルフ、前も言ったけど僕の仕事だから…困るよ…」
「ニコ。俺はクリスマスもプレゼントも正直どうでもいい。ただニコの役に立ちたいだけだ」
ルドルフはいつもこの調子だ。今回ばかりはニコラスも素直に『ありがとう』が言えない。初めての仕事だから全部自分でやりたかった。助かったのは事実だが、くやしい気持ちが大きくて。
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