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『ニコとルドルフ』③ By.Kuro
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ルドルフがニコラスの仕事を助けることはこれが初めてではなかった。
1年間かけてクリスマスの準備をするが12月になると手紙の量も増え、サンタ村は途端に忙しくなる。
先週のこと。
ニコラスが徹夜で返事を書いた翌日、手紙が一通も届かなかった。不思議に思いルドルフを問い詰めるとポストから自分の部屋へ隠していたことが発覚。ルドルフが自分で返事を書きたいと渡してくれずケンカになった日があった。自分が頼りないばかりにこんな事態になったのだと情けなくなり涙をこぼしたニコラスを見てルドルフが慌てて手紙を返してくれた。
その後もランプを灯して辞書を片手に返事を書いているニコラスは夜な夜な視線を感じる。振り返ればドアの蔭から心配そうな顔でルドルフがニコラスを見ているのだ。
「まだかかりそう?」
「うん、あと10通は書かないと」
「手伝う」
「だめ!」
「なぜ」
「だって!みんなはサンタからの返事を待っているんだもん。トナカイのルドルフが書いちゃ…意味ない」
「……わかった。でも翻訳の手伝いならいいだろ?ニコが言ったことを俺が書くからニコがその後清書すればいい」
「う…うん」
ニコラスは学校で授業を受けても悲しいほど外国語の習得が苦手だった。一方でルドルフは独学で10か国以上の言葉を自由に扱えるようになっていて。
「ニコの役に立ちたいから」
照れることなくそんなことを言うルドルフに、聞いているニコラスが赤面した。
いつもこのような感じで本当困ってしまう。
プレゼント村から届いた荷物は庭のモミの木の高さまで積み上げられた。
ルドルフは今年18歳になるトナカイ。ニコラスが野良トナカイだったのを拾ったのが始まりで一緒に暮らすようになった。トナカイ学校にも行かせたけれど、ニコラスにしか懐かず無愛想でケンカ腰なルドルフに教師たちはお手上げだった。仮免許が発行されてからは自宅学習として、ニコラスと村の上空を飛行してサンタクロースソリ免許を獲った。
ルドルフは運動神経がよく、走るのが早かった。しかし協調性に著しく欠けているため八頭ソリには一度も声をかけてもらえなかった。本人はそのことをむしろ喜んでいるようだった。ルドルフに理由を訊くと返ってくる答えはいつも同じ。
「俺はニコだけを運びたい。
ニコを運ぶのは自分の役目だ」
今も届いたプレゼントを白い袋へ入れる作業を黙々と手伝っている。納戸へ運ぼうと持ち上げようにも重くて担げないニコラスを見て、ルドルフは駆けつけ軽々と持ち上げた。
「あ!ルドルフ…僕が運ばないと意味がないんだよ」
「でもニコ、そんな小さい身体で…」
「ちっ…たしかに小さいけど…僕だってサンタなんだからこれくらい持ち上げられるってば!」
「ごめん、ニコ…」
きつく言いすぎただろうかとニコラスは不安になったが落ち込むルドルフを見ないようにして、よろめきながらも引きずるようにしてプレゼントを納戸へ運んだ。
すべて片付けてから、食事の後はまた手紙の返事を書く。そうしていつもの押し問答。ルドルフが自分も手伝うと言って了承するまで手紙を渡してくれない。本当、いつもこうなんだから。
「早く終わったら、ニコはベッドで寝るだろう?一緒に寝たい」
そりゃ僕だって…
悲しそうな顔で『あのベッドに一人で寝たくない』などとルドルフから言われたら、ニコラスも断れない。結局今夜も手伝ってもらうことになった。表情はあまり変わらないけれどルドルフのうれしそうな様子を見てつい甘えてしまうニコラスであった。
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