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『Arctic Days』④by.夏月亨
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翌日の昼過ぎ、ママは死んだ。
最後の経過報告になった朝、医師は僕につららの言葉を何一つ言わなかった。
「昨日と何も変わっていません」
そう一言だけ告げ、初めて決まった面会時間でもないのに集中治療室に入るよう促された。
五本の指と手の平がパンパンに腫れ上がってる日があった。
目が落ち窪み、顔も躰も、全てが枯れ木のように見える日があった。
だが、今日のママはとても穏やかで美しかった。
点滴の落ちる速度も緩やかで、それまで仕切っていた薄く寒々とした白い四面を囲うカーテンは取り払われ、窓から入る日差しを受けながら静かに、ゆっくりと生を手放し、全ての機能が止まるのを見届けた。
死亡確認に医師や看護士が慌しく出入りした後、清拭をするから、と病室を追い出された。
桧原が何事かを医師たちと話し、桧原と一緒に病院を出て、その後は通夜だ、葬式だ、と自宅に会ったことのないママの会社の人たちが何人も出入りし、仏壇を買いに行かされ、嵐のように僕をかき乱しながら時間が過ぎて行った。
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