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『Arctic Days』⑤by.夏月亨
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それから10年間。
僕は桧原と一緒に過ごした。
桧原は最初は優しい振りをして僕を手なづけようとした。
だがそれもほんのわずかな期間だけ。
まんまと大金を手にした桧原は僕には目もくれなくなり、外車を乗り回し、酒に女に博打にとやりたい放題の豪遊をし尽くした。
当然金も尽きるのは早かった。
ママと暮らしたアパートは冬休み中に解約され、2LDKの新築マンションに移り住んだ。
だがそこに住んだのは3年にも満たなかった。
次に住んだのは木造の風呂無しの1間しかないアパート。
このアパートに移ってから、桧原が女を連れ込む回数がめっきり減った。
それは僕にとって更なる地獄の始まりでもあった。
「準。こっち来いよ」
それまではベランダに放り出され、魔法瓶に詰めた湯をすすり、終わらない情事に息を潜めていたのが、その対象が急に自分に変わったのだ。
「お前、細いわりに結構いいカラダしてるよな、胸はないけど」
「かわいいよな、準は。その嫌がる顔がそそるねぇ」
嫌がれば嫌がるほど、桧原の嗜虐は増す。
躰を開けと言われればその通りにし、足を舐めろと言われれば這いつくばって舐める。
従順な人形になることしか出来なかった。
僕はクリスマスが嫌いだ。
年を経る毎に、桧原の執着は増していく。
狂った日々。
終わらない悪夢。
僕はこの世のすべてのものを呪い、汚れた自分自身を一番に厭った。
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