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『ハッピークリスマス!!!』③by.はにら35
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***?
ヒヨドリさんというのは、編集のお偉いさんだとかで、仕事場も家も一緒くたでタコ部屋と化している魔窟だ。
広さは20畳くらい?赤い重厚な模様の絨毯が敷いてあって、ピスタチオグリーンの壁に、赤茶の刺し色。壁にはロウソク風のブラケット。赤い扉。猫脚の付いたダークチェリーの一人掛けソファ。
モロッコから取り寄せたという吊りランプに、レトロなアンティークっぽいスタンドライト。
傷の多いチークの年期の入ったテーブルと茶色の大きな革張りのソファが、真ん中にでんと据えてあって、まわりはぐるりと天井近くまである大きな本棚に囲まれていて、そこらじゅうに大小の観葉植物が置いてあり、ジャングルのようだった。
震災のときには全てが中心に向かって倒れ、あやうく死にかけたという。こわっ。
でも、居心地が良いのでついつい長居をしてしまう。そんな隠れ家的な場所。
昼下がりに原稿があがれば、もう飲みがはじまり、ボトルがまわり、誰かが小さな台所で簡単につまみを作ってはちびちび昔話をしたり、楽器を奏でたり、本を読んだり。
僕みたいに、オーナーが趣味で集めた年代物のカメラをいじったり。
「ふはー。これシャッター音、やっぱいいっすね」
「それ、落として壊したら100万な」
「ぐあぁ。脅かさないでくださいよ。思わず落とすとこでしたわ」
「年代もんやからなぁ。それ中古屋でもなかなか手にはいらんし弁償すんのもひと苦労やでー」
「まじでほんとにほんとですか、ヒヨドリさん」
「まあな。って関内の出店で値切って買ったわ」
「なんぼでっか」
「まあ60万かな」
「おお~60になった。いやぁ?それでも弁償したくないぃ~」
このカメラが、二眼レフの、ローライフレックス4.0という、いいシャッター音のするやつなんだ。
あんまりべたべた触っていて、二眼レフを面白がっていたら、別の手頃な値段の国産のを一週間貸していただくことができて、そのときは朝から晩まで仕事そっちのけで、いや、仕事はするべきなんだけれど、あちこち遠征して撮りまくった。
腕のほどはとにかく、下手の横好きだけれど、黒い革張りの、あの形と、がっしゃんという重厚なシャッター音にぞっこんなのです。
***?
結局だらだら喋って呑んで、帰宅は12時をまわっていた。
新宿2丁目の近くのその魔窟を出て、ふらふらと和風のカフェに入ろうとして、見つけてしまった。
斜め前から、背の高いかわいらしい男の子同士が手を繋いで歩いてくる。
「あ」
知らん顔して通り過ぎ、しばらくして緊張を解く。
タカヤナギさんにささやく。
「タカやんセンパイ、ここほんとにふつうに歩いているんですね、カップル」
「ああ、そうね。まぁ、このあたりは必然的にそうなるわなぁ、結界みたいなかんじ?」
僕は田舎から出てきて、下北沢に住んでいるから、物珍しくてちらちら見てしまい、こら、見んな、とタカヤナギさんに嗜められた。
「僕らも、もしかしてそう見える?」
「はー?いやいや、あり得んやろ」
「だってタカやんさん短髪で、くりくりおめめに、図体ばっかりでかくって色白で、僕かわいいいしネコなかんじ?」
「アホか、お前がかわいい言うな、ちっさいだけやろ」
「意外ともてるんすよ、今はいないけど彼女」
「自慢すんな、それに俺、彼女おるわ」
「え?脳内妄想彼女?」
「ちゃうわっ」
「へえええ。アヤシイ!こんな忙しいのに、アンタになんで彼女ができるんですか!」
「ほな、見せたるからウチ来いやっ」
というわけで、彼女とご対面中。
「こいつ、ウチとこの後輩」
「あっ、今日は急ですんません。お邪魔しますー」
「どうも。いつもお世話になっております」
と、ショートボブの切れ長の眼の、おっぱいが大きいかわいい彼女。
そういえば、タカやんセンパイに見せて貰った、彼が自宅暗室で焼き付けたモノクロ写真のなかに、彼女、いたわ。
ずるいな、僕を置いてひとりで充実してたってわけ?
「2次元彼女かと確認にきました!」
というと、けらけら笑う。
「明日早いんやし、泊まってけ」
「ラジャ!」
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