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『ハッピークリスマス!!!』⑤by.はにら35
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***?
■■■12月24日■■■
で、今日は連続5日め、家、帰ってねーよ。椅子の上で数時間しか寝てねーよ…。
ひとりでぼうっとしたいお。
寝てなくてオカシイからって、昨晩のアレもどうかと思うし、とりあえず頭んなか、からっぽにしたい、寝かせてくれ。
…でもまだ追い込み作業が残っていた。
夕方からMacに向かって、千切っては投げ、ちぎっては投げ。
かけっぱなしのFMラジオからは、クリスマスの曲がうんざりするほどひっきりなしに流れている。
***?
終わったー!
ざまみろ、クリスマス終了までに終わってやったぜー。
って11時、もう回る、まわってまう、ケーキ!ケーキ食いたい!
クリスマスイブなのに~。泣けてくる~。
なんでクリスマスってのに、ホモとふたりこんなとこで閉じ込められてんのー。
彼女もこんな忙しいんじゃいつまでたってもできないし、俺の人生オワタ。
「おまえなぁ、思考だだ漏れやし、それ。ホモで悪かったな」
「こら!ソコは否定してくださいよ」
「食いたいか、ケーキ?」
「食いたいよぅー、もう、僕、ペコ家のまずいショートケーキでもいい!」
タカヤナギさんは、ぎょろりとした二重の眼を僕に向けて、逡巡して大きい背中を向けると椅子の後ろの冷蔵庫から小さな四角い箱を出してきた。
「はぁ。ったく。ほら、おまえの好きな巣鴨のFrench Pound Howlのイチゴのショートケーキだ!大奮発やでー」
「ぎゃあああ!いつの間に!?タカヤナギさま!神!結婚して!嘘!ホモなしで」
見せておいて、ケーキの箱はすぐ戻された。
「阿呆、今すぐはやるか、お前この提案書出すの忘れてたろ、こっちの始末書終わるまでおあずけや」
「ぎゃーオニ!悪魔が降臨っ」
「さっさと終わらせろ」
「はいっ」
***?
もうすぐ、12時。カウントダウンがはじまるというのに、僕は始末書を書いている。
ラジオからは、ジョン?レノンの、ハッピークリスマスが流れている。
And, so this is Xmas
?For weak and for strong
?For rich and the poor ones
?The world is so wrong
?And so happy Xmas ?
For black and for white ?
For yellow and red ones
?Let's stop all the fight ???
A very Merry Xmas ?And a happy New Year ?
Let's hope it's a good one without any fear …
(またクリスマスが来たよ?
弱い者にも強い者にも?お金持ちにも貧乏人にも?
この世界、間違ってるからさ、
?ハッピークリスマス!
?黒人にも白人にも?黄色い人や赤い人にも
?
戦争なんてやってんじゃねえよ。
心からメリークリスマス?そしてハッピーニューイヤー
?今年は何も恐れることない、いい年であるよう願おう!)
***
後ろで、タカヤナギさんがそれに合わせて歌っている。
始めは小声で鼻歌ていどだったのが、だんだん乗ってきて、ついに部屋中にびりびり響きわたる声で歌いだした。
わ。なにこれ。
ちょっとした前座バンドで、どさ回りをしてたっていう太い声量の、高音部分の柔らかに伸びる低音が絶妙に僅かにかすれた声。
完璧な、発音で。腹に響く声。
ああ、この声だ。やばい、きもちいー。かっこいい。
この声に合わせて、
…僕も、うたうーー!!
***
And, so this is Xmas ?
And what have we done another year over ?
And a new one just begun ?
And, so happy Xmas ?We hope you have fun
?The near and the dear one ?
The old and the young ?
A very Merry Xmas ?And a happy
New Year ?Let's hope it's a good one without any fear ?
War is over, if you want it ?War is over, now …
Happy Xmas !!!
(さぁクリスマスだ?この一年何をした??
もうこの年も終り?新しい年が今始まったのさ?
だからクリスマスを楽しんでほしい
?近くにいる人や親しい人、?お年寄りや若い人と
心からメリークリスマス?そしてハッピーニューイヤー?
今年は何も恐れることない、いい年であるよう願おうよ?
戦争を終わりにできる、もし君が望むなら?戦争を
終わらせちまおう、今すぐに
ハッピークリスマス!!!
***
お預けのすえ、やっと食べられたケーキはめちゃくちゃおいしくて、疲れた身体に染み渡ってすみずみまで伝わって、満足した。
僕はもうタカヤナギさんに向かってにこにこして、でも頭の中は寝ることでいっぱい。
「ごちそうさまでした!!はー、食った食った」
「そこ、クリームついてるで」
「ちょ、タカやんセンパイ、なになになに」
「いただきまーすっ」
「ええっ。……んっ」
***
こうして、リア充のためのクリスマスの夜景のきらめきのひとつひとつは、
僕たち底辺サラリーマンが作っているのさ。
つくるのと、見るの。どっちがいい?
だってさ、追い込みの終わったこの瞬間の充実感っていったら。
魂が震える歌を聴いて踊りまくったら、それだけで満足しちゃう。
嘘。
まだまだこんなんじゃ満足しない。
もっと、つくるんだ、よ!!!
***
僕の仕事は、やわらかテイストのHPでほっこり気分を味わって貰い、
クライアント様と患者様とのやりとりの壁をなくして、
橋渡しをする仕事です。
この仕事の好きなところは。
じたばたして内部で喧嘩して、外部と擦り合わせ、なんとか期限までに納品して、誰かに喜んでいただいて終わるところです。
人見知りな僕は、人見知りな部分を隠して、繋がってこのできあがる瞬間の高揚を繰り返すことが、麻薬のように身体に染み渡って、徹夜で何日も寝られなくて、ミスして怒られて、オカシクなって、そんな時間を過ごしても楽しいと思える、この場所をとても気に入っています。
***
あれ?
なんか、やっぱりオカシイ。
よな……??
はぁ。寝よ。
おやすみなさい。メリークリスマス!
***
ばたん。(玄関扉の閉まる音)
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