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『傍にいなくても。』① By.夏月亨
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僕らが付き合いだして初めての12月を迎えた。
2学期は体育祭にスクールフェスティバル(学習発表会)と何かと忙しく過ごしていた為、全く実家に寄り付くことがなく、あっという間に季節が過ぎてしまった。
「夏休みも結局荷物を取りに戻ったくらいで息子の顔を忘れてしまいそうよ、冬休みはちゃんと帰っていらっしゃい」
と母からここのところ何度か連絡が来ている。
大学に入ってますます放蕩ぶりが加速した兄のことはとっとと諦めたらしく、その分お鉢が回ってきた格好だ。
大掃除や年末年始の買い物などに付き合わせるつもりなのだろう。
内心ため息をつきながら、同居人で恋人でもある尚人に声をかける。
「尚人はいつ家に帰るの?」
尚人は叔父の家に身を寄せている。
尚人の父は、まだ物心がつかない小さな時に事故で亡くなった。
家業の跡を継ぐ形で叔父夫妻とその子供たちが今の家に引っ越して来たのは尚人の母が海外での仕事で留守がちになり、ひとりにしてはおけない、という理由からだったそうだ。
従兄弟たちとの仲も良好だし、叔父夫妻もあけすけなく接してくれて何も問題はないそうだが、やたらと「本当の親だと思ってくれていいから」「幸子さんがいなくて淋しい分、何度も頼ってね」と言う叔母、久美の愛情がどうしても重く感じてしまうことがあり、あまり家には足が向かない、と前に聞かされたことがある。
「叔父は叔父で家業を継いでくれてるし、叔母は父とは兄妹だったわけだけど…、年下だってこともあって母に多少のお伺いも立てながらで、ずい分面倒かけちゃってるんだよな。別に気詰まりとかではないけど、家にいると何だか落ち着かないし、申し訳ないな、早く自立してぇ、って思ったりもするし、ここ(寮)に来れてホッとしてる部分があるのも確かなんだよな」
昨年、怪我の入院のせいで進級出来なかったのが相当苦い経験だった、と苦笑しながら大したことではないけど、と家の事情をぽつぽつと、以前に話してくれた。
『う~ん、24日は帰って来いってチビ(従兄妹)がうるさいんだよ。例年はりきってパーティの用意をしててさ。去年参加出来なかったから余計なんだけど。裕樹は?』
「うちも似たような感じ。クリスマスにとは言われてないけど、しこたま家の用事押し付けられそうで頭が痛い。まあ、仕方がないよね」
(そうか、クリスマスは一緒に過ごせないのかあ)。
と思いながらこんな会話を交わし、期末試験をやり過ごすと、すぐに終業式がやって来て冬休みに突入し、クリスマスも間近に迫ってきた。
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