アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
『傍にいなくても。』② By.夏月亨
-
今日は12月23日。
明日の朝に尚人は家に帰ると言うので、自分も同じタイミングで帰ることにした。
『何だったらお前もうち来る?』と軽く家に誘われはしたのだが、一緒にいられたらそれはそれで嬉しいけれど…尚人自身が気が引けている所について行くのはものすごく気が進まない。
それに自分の家でも母親が手ぐすね引いて待っている状態だったので「また今度ね」と言って遠慮することにした。
パーティなんかに顔を出して…、その後ひとりで家に帰るのも寂しい。
毎日一緒にいた分、意識するとほんの少しの期間離れるだけなのに、何だか今からとても寂しい気がしてしまう。
寮の中はひとり、ふたりと実家で過ごす為に人が減っていき、今では半数も残っていないだろう。
通常ではない何かに押しやられ、感傷が過ぎてしまってるのかもな。
今日は土曜日でもある。
尚人は土日は道場通いをしている為、本来なら週末は道場から近い家に泊まって日曜の夕方、寮に帰ってくる。
いつもは付いていくことはないが、全く何も無いのも味気ないのでケーキを買う為に一緒に街に出ることにした。
時間があったので思いつく限りのケーキ屋をはしごして、小さなブッシュドノエルを見つけた。
ロールケーキを年輪に見立て、表面は木肌を模してチョコレートクリームを塗り梳ってある。
イチゴを上下に切り分け、生クリームを詰め顔を描いたサンタがちょこんと乗っているのがかわいい。
イチゴの先端には同じく生クリームで帽子のぼんぼりが、胴体の部分には服のボタンも書かれている。
見た瞬間、とても気に入ったのですぐにそれを購入した。
その後、稽古を終えた尚人と合流し『どこかぶらつくか?』とも聞かれたが、買ったケーキを倒してしまわないかと持ち運ぶのが気になったし、出来る限り一緒にいれる時間は尚人と触れていたかったかったから「ううん、帰りたい」と答えた。
そうして僕らは光り輝くクリスマスで賑わう街を後にし、元来た道を戻ることにした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
37 / 72