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『無表情サンタの贈り物』① by.四つ花
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はぁっ…と息を吹き出せば、その息は白く染まり冷たく澄んだ空気に溶ける。
すっかり冷え切った手に温かな息を吹き掛けても、そんなのこの寒空の中では気休めにしかならなくて。毎年のことながら、この寒さには慣れない。
そんな自分に溜め息を吐けば、それさえも白く染まり鋭い風に流された。
『そろそろ行くぞ。雪』
「何度も言ってんでしょ。その名前で呼ばないで」
雪、なんて、なんて冷たい名前。ただでさえ寒いのに、そんな冷たい名前で呼ばれちゃたまったもんじゃない。
毎年言う台詞に、苦笑を零す彼。
他のトナカイにはないであろうその表情をいとも簡単に作る彼───僕のトナカイ・アラは、トナカイであるはずなのにあの変人父さんに育てられたからか人間のような感情を持つ。
まぁ、変人、だなんて、僕が言えることではないけれど。
くすりと笑えばアラが怪訝そうな顔で見つめてくるのでなんでもないと返し、そして僕はアラの引くソリに乗り込んだ。
「♪ジングルベールジングルベール鈴が鳴る?」
小さく歌い、早々に馬鹿らしいと止める。
毎年繰り返すこの行動は、僕にとってはやらなければならないことの一つといってもいい程。アラが何度目かの苦笑を零すのを無視して、僕は空を飛ぶ木で出来たソリの中から下界を覗いた。
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