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『無表情サンタの贈り物』② by.四つ花
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下界。それは、地上。
煌びやかで幸せというものに満ち満ちた下界。僕は人間の欲にまみれたそこを見下ろし、ばぁかと呟いた。
『馬鹿、か…。雪、どうかしたのか?』
下界を見下ろす僕に、不意に掛けられた言葉。見ると、アラが横目で僕を見ていた。
ふふ、トナカイが横目で、なんてなんか笑える。
くすりと漏れる笑い声に、アラが溜め息を吐く。
それを視界の隅に捉えながら、僕は再び下界を見下ろした。
「僕は、どうもしないさ。ただ、毎年浮かぶ言葉を、そのまま口にしただけ。
……ホント人間ってもんは、馬鹿だよねぇ」
言って、あ、そーいえば自分も人間だなぁなんて呑気に考える。
アラがゆっくりと口を開いた。
『そうか?俺は、素直に欲のまま行動する人間が綺麗だと思うぞ?』
どこか憂いを含んだその言葉に、ふっと微かな笑いを返す。
アラって本当、トナカイらしくない。と言えば、うっせ、と返ってきた。
「…元々さ、クリスマスってのはイエス・キリストの降誕を祝う祭なんだよ?それを、自らの欲に従い本来の目的も知らずにどんちゃん騒ぎをするなんて、馬鹿としか言いようがないよ」
そう思わない?と訊いても、アラが人間の肩を持つことは分かり切っているので、口にはしない。
その代わり、下界から目を離しアラの後ろ姿を見つめた。後頭部が、走るのに従ってゆらゆらと動く。
言葉で表すとホラーみたいだなぁ、なんて思いながら、アラからの返事を待った。
しかしアラからさっきの返しらしい返しは返って来ず、僕は暇つぶしにでもと真っ白な袋の中に入った無数のプレゼントたちを確かめることにした。
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