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『サンタと天使が笑った夜』②by.高瀬結衣
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店頭に設置された簡易テントの下に準備されたテーブルと、その上には山と詰まれたホールケーキの箱の山。
息も凍りつきそうなこの真冬の夜に午前0時までひとり店頭販売とか店長俺を殺す気か。
ちっちゃな電気ヒーターを手渡され、だからこその特別手当だと言い返されれば文句もいえず、俺はダウンコートに身を包みちっちゃな電気ヒーターで足元に僅かな暖をとりながら、半ばやけになって声をあげ、クリスマスケーキを売り続けた。
駅前という好立地のお蔭で売れ行きは順調、これなら予定よりも早く上がれるかと調子に乗り始めた頃から客足はがくんと減り、ラスト1箱を残したところでピタリと止まってしまった。
寒空の下、客引きにも疲れ、ぼんやりと街の明かりを眺めること30分。店内の時計に目をやれば23時半を回っていた。
そこへ丁度奥から店長が現れ、カタカタ震える可哀相な俺にとホット珈琲を持ってきてくれた。
「アキ、まだ完売しないのか」
「はあ、あと1箱っス」
「そうか、うん、0時になったら上がっていいぞ、残ったらそれはお前にやる。持って帰れ」
店長。
笑顔で気前いい事いってくれましたけど、いやこれデカイし俺一人暮らしだし食えねーしぶっちゃけいらねーっス。
とはいえず、ありがとうございますと笑顔で返し、目の前の1箱に視線を落とす。
残った1箱はビッグな直径18cm、8人前の6号ショートケーキ。この時間にファミリーサイズとか、だいぶ無理……。
いやでももしかしたら残業帰りのビッグダディとか通りかかって目にとめてくれるかもしれないなどと僅かな期待を心に残しつつ、下を向き小さくため息をひとつついた時。
目線斜め前方に、ピカピカに磨かれた黒の革靴。
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