アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
『サンタと天使が笑った夜』③by.高瀬結衣
-
慌てて顔を上げると、目の前には上品な黒コートにブルーのネクタイ。20代後半だろうか、キリリと端正な目鼻立ちの一見サラリーマンが立ち止まり、テーブル上に鎮座しているケーキの箱をじっと見つめていた。
え、この人この若さでまさかのビッグダディ?
男が顔を上げ目があった瞬間、眼光の鋭さにまるで睨み付けられたような気持ちになり思わずゴクリと唾を飲み込む。
「売れ残りか」
び。
びっくりした。
ガン見されてのその発言、俺に向けられたのかと思ってしまったじゃないか。
冷静に考えればケーキですよね。普通に考えて。ああだめだこんなマイナス思考。自分売れ残りとか残念過ぎる。いやそんなことより、てことはアレか、売れ残り→値切り、ということか。
「おい」
「あ、す、すみません」
また睨まれてしまった。
まあでも店長も余ったら俺にくれるなんて言ってた位だし、買ってもらえるなら多少値引いてもかまわないだろうと気を取り直し。
「はい、今の時間からこちら半額の2000円となりますが如何でしょうか」
自分で云うのもなんですが、営業スマイルは得意です。俺ちょっと可愛い顔してるしね。
なんて地味に心の中で自分のテンションを上げつつ、白い歯を見せてニッと笑った直後。
「お前も込みでその値段か」
硬直。
「……はい?」
「お前もついてその値段か」
いや微妙に変えて繰り返されても。
ギャグ?何これツッコミ待ち?いやでもこの人全然本気なカオしてるし、この場合どう返したら正解?
5秒考えた後、この人は真顔で冗談を云う人なんだ、ここで乗っておけばラスト1箱をご購入いただけるに違いないという結論に至った俺は、思い切りよく再びのキラキラスマイルを目の前のお客様へと向けた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
58 / 72