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『サンタと天使が笑った夜』④by.高瀬結衣
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「はい、最終タイムセールのコミコミ2000円で!」
「よし買った」
やった!と心の中でガッツポーズを決めつつありがとうございますと頭をさげた直後。
男は自分の腕時計に視線を落としながら、当たり前のように云った。
「もうすぐ0時だ、待っているから早く上がって来い」
「は?」
「さっき店長が言ってただろう、お前が上がるまで俺はここで待っている」
ぽかんと口を開けたままの俺の前で男は2000円をテーブルに置き、不機嫌な表情で再び口を開いた。
「早くしろ。俺を待たせるな」
ギロリと睨まれ思わずハイと返事をしてしまった情けない俺。
とりあえず完売しましたと店長に報告し、予想以上の特別手当をいただいた後、更衣室で着替えながら頭の中を整理してみることにした。
ええと、そうだ。
あの人は俺の上がりの時間を知っていた。直前の店長と俺の会話を聞いたんだろう。てこは、0時を過ぎたらあのケーキが売り物でなくなる事も知ったはずで。からの購入。
彼はどうしてもケーキが欲しかったのか。家で待つ家族のために?
でもそしたら俺、邪魔だよね。ていうか俺、いらなくね?どう考えても。
何かのドッキリか。まさかあの人俺の知り合い?でも全く記憶にない。
もしかしたらあの人、顔にでないだけで酔っ払いだったのかも。
そうだそれが一番濃厚。外へ出たら居なくなってるかも。
少しだけ気分が軽くなった俺は、いつもと変わらずバイト仲間と店長に笑顔で挨拶をして、裏口から外へと出た。
すっかりひと気の無くなった大通りはひっそりと静まり返り、真っ黒な空を見上げハアと息を吐き出すと、それは白くゆっくりと深い闇へと吸い込まれていく。
「寒いな……」
ポツリと呟いた瞬間。
「遅い」
不機嫌な声に恐る恐る振り返ると、やはりというか先程の男が仁王立ちしていた。
おかしいな、この人何でいるんだろう。
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